—— 真の価値は、時を超えてあらわれる
孔子は、人生の成果についてこう語った。
「君子は、死んだあとにその名が称えられないことを心から悔やむものだ。
だからこそ、世のため、人のために尽くす仕事を、日々まじめに重ねなければならない」と。
一時の賞賛や名声ではなく、時代を越えて記憶される生き方こそが、君子の志である。
それは、目立つことや褒められることを求めるのではなく、
自らの徳・行い・働きが、後に自然と評価されるような生き方を意味する。
人生の仕事とは、**「名を残すために尽くす」**のではなく、
「尽くした結果、名が残る」ように生きること――。
孔子が説いたこの言葉は、静かで力強い使命感に満ちている。
原文とふりがな
「子(し)曰(い)わく、君子(くんし)は世(よ)を没(ぼっ)して名(な)の称(しょう)せられざるを疾(うれ)う」
注釈
- 「君子」:人格と行動の徳を備えた理想の人物。
- 「世を没して」:この世を去る、すなわち死後。
- 「名の称せられず」:よい評価や功績が語られないこと。
- 「疾う(うれう)」:「病む」と同じで、心を痛める・残念に思う意。
- この言葉は、名誉欲にとらわれることを戒めると同時に、後世に恥じない仕事をせよという教え。
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(永く価値ある人生を)legacy-through-deeds
(行いで遺す名)honor-after-death
(死して称えられる生き方)
この章句は、自己実現やキャリアの本質にも通じます。
目の前の承認よりも、**「あとから自然に評価される働き」**を積み重ねていくこと――
それが、ぶれない努力と誇りにつながります。
1. 原文
子曰、君子疾沒世而名不稱焉。
2. 書き下し文
子(し)曰(いわ)く、君子(くんし)は、世(よ)を没(ぼっ)して名(な)の称(しょう)せられざるを疾(にく)む。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)
- 「子曰く、君子は世を没して名の称せられざるを疾む」
→ 孔子は言った:「君子(徳ある人物)は、生涯を終えても、自分の名(=人格・行動の価値)が世に認められないことを憂える」。
4. 用語解説
- 君子(くんし):高潔な人格と徳を持った立派な人物。孔子の理想的人間像。
- 疾む(にくむ/うらむ):ここでは「残念に思う」「憂える」「心を痛める」といった意味。怒りや妬みではなく、「もどかしさ」や「嘆き」に近い。
- 名(な):名声、評判というよりも「行いにふさわしい評価」や「徳の記録」を意味する。
- 称せられざる(しょうせられざる):言及されない、称えられない、認識されないこと。
- 没世(ぼっせい):この世を去る、生涯を終えること。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言った:
「君子とは、生涯をまっとうしても、その徳や行いが世に知られず、名を称えられないまま終わってしまうことを、心から嘆くものである」。
6. 解釈と現代的意義
この章句は一見「名誉を求めること」を是としているようにも見えますが、孔子がここで語る“名”とは単なる名声ではなく、行動と徳にふさわしい評価=社会的正義の実現です。
- 君子は、「世のため人のために尽くしても、それが正当に評価されない社会のあり方」を憂う。
- 努力や誠実さが報われず、正しいことが正しいとされない風潮そのものへの痛烈な批判が込められています。
- これは単なる自己顕示欲の話ではなく、**「善き者が顧みられない社会の危機」**に対する、孔子の倫理的な怒りとも言えるものです。
7. ビジネスにおける解釈と適用
◆ 「実力と誠実が正当に評価される組織をつくれ」
評価されるのは成果だけで、誠実さや貢献は見過ごされる──そんな風土では、真に価値ある人材は定着しない。
◆ 「“静かな貢献者”の声を聞け」
目立たずとも日々組織を支えている人々が、正当に称えられないまま去っていく──それこそが組織の損失。
◆ 「組織の“記憶”が信頼を生む」
その人が去った後に「その人がいたことがわかる」。そんな足跡を残せる文化が、企業としての厚みにつながる。
◆ 「称賛されるべき行動を称賛せよ」
結果だけでなく、「どう行ったか」にも光を当てるべきだ。価値ある行動は名として称され、継承されるべきである。
8. ビジネス用心得タイトル
「誠の名は称されてこそ──努力と徳を忘れない組織に」
この章句は、「社会が正しい人物を正しく評価できるか」という永遠の課題を投げかけています。
人事評価、組織文化の見直し、離職防止、リーダーの称賛基準づくりなどにおいて重要な教訓となります。
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