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生まれつきより、鍛え上げた徳をこそ評価せよ

――人も馬も、育て方と努力で真価が決まる

孔子は、人や物を評価する基準について、次のように語りました。

驥(き)は其(そ)の力を称(たた)えず。其の徳を称するなり。

ここで言う「驥(き)」とは、名馬(めいば)・良馬のことです。
孔子は、「生まれながらの脚力や素質」を賞賛するのではなく、
訓練によって身につけた“徳”――つまり、人と一体となって走る信頼や協調性、安定感を評価せよと言っているのです。


人もまた同じ

この言葉は馬に限らず、**人にもそのまま当てはまる寓意(ぐうい)**です。

  • 才能や地位、出自などの“生まれつき”で評価するのではなく
  • 努力によって培った人格、協調性、誠実さといった“徳”をこそ評価すべきであると孔子は教えています。

これはまさに、儒教の根本にある「修身斉家治国平天下」=自らを磨く道の重視の表れでもあります。


原文とふりがな付き引用:

「子(し)曰(いわ)く、
驥(き)は其(そ)の力(ちから)を称(たた)えず。
其の徳(とく)を称(たた)するなり。


注釈:

  • 驥(き) … 名馬・良馬。生まれつき優れた馬のことだが、ここでは“修練された馬”を暗示する。
  • 力(ちから) … 馬本来の脚力や素質、生得的な能力。
  • 徳(とく) … 馬が調教を経て、乗り手に従順で、安定した走りができるようになった性質。
     転じて、人の修養・人格・礼儀・道徳などを指す。

教訓:

この章句が伝えるのは、**「生まれより、育ち」「才能より、鍛錬」**という孔子の評価観です。

  • 本当の価値は、自ら磨いた“中身”にある。
  • どれほど恵まれた素質があっても、それを活かし切る鍛錬がなければ真価は発揮されない。
  • むしろ、努力して“徳”を得た者をこそ、賞賛すべきである。

1. 原文

子曰、驥不稱其力、稱其德也。


2. 書き下し文

子(し)曰(いわ)く、
驥(き)は其の力(ちから)を称(たた)えず。其の徳(とく)を称(たた)うなり。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)

「驥は其の力を称えず」
→ 優れた駿馬(=驥)は、その走力や体力ではなく、

「其の徳を称うなり」
→ その内に備わった気質・性質(=徳)をもって称賛される。


4. 用語解説

  • 驥(き):一日に千里を走るとされた名馬(駿馬)のこと。比喩的に「優れた人物」や「器量ある者」に用いられる。
  • 称する(たたう):称賛する、評価する。
  • 力(ちから):ここでは単純な身体的能力、技能、表面上のパフォーマンス。
  • 徳(とく):人間性、品性、内面的な優秀さ・道義的価値。人格の本質。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

孔子はこう言った:

「優れた馬(驥)は、その力によって評価されるのではなく、
むしろ、その品性や気質(徳)によって称賛されるのである。」


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「真に優れた者は、能力よりも人格で評価される」**という思想を示しています。

  • 表面的な能力(スキル・速さ・見た目の成果)だけで評価するのではなく、
    その人物の持つ品格・誠実さ・信念といった内面性=“徳”こそが、真の評価基準である
  • 孔子は、「何ができるか」よりも、「何をもっているか(どう生きているか)」を重視しています。

7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

✅「成果だけでなく、“人としての質”が評価されるべき」

  • 目立つ実績やアウトプットだけに注目する評価制度では、信頼・誠実・人間力が見落とされがち
  • 組織に本当に必要なのは、“徳”のある人材──誠実・協調・倫理観を持つ人物

✅「優れたリーダーは、能力よりも“あり方”で人を導く」

  • リーダーがすべてのスキルに秀でている必要はない。
    人としての信頼感・一貫性・思いやりが、組織の方向性と士気をつくる

✅「評価制度に“徳”の視点を取り入れよ」

  • 評価指標に「成果」だけでなく、「プロセス」「協働」「誠実さ」などの徳的要素を反映させると、
    長期的に安定した組織文化が育まれる

8. ビジネス用の心得タイトル

「実力より人格──真の信頼は“徳”に宿る」


この章句は、スキル万能主義や成果主義が進む現代において、
「人間としての評価軸」を再考させる、極めて深いメッセージを持ちます。

“できる人”より“信じられる人”が、組織の柱となる。
それが孔子が教える、“驥”すなわち本当に優れた者の定義です。


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