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誠実に仕えることが、まっすぐな進言を可能にする

――本当に諫めるとは、誠の上に成り立つ“勇”である

弟子の**子路(しろ)**が、孔子に「君主に仕える心構え」について尋ねたところ、
孔子は極めて簡潔に、しかし深くこう答えました。

欺くことなかれ。そして、之を犯せ。

つまり――

  1. まず誠実であれ。主君に嘘をついたり、迎合したりしてはならない。
  2. その上で、君主が過ちを犯していれば、たとえ嫌がられようと、進言してでも正さねばならない。

ここで使われている「犯(おか)す」という語は、
ただ進言するという意味を超え、相手の機嫌を損ねたり、怒りを買ったりすることも辞さずに意見を言うという、
強い覚悟と正義感を含んだ語です。


原文とふりがな付き引用:

「子路(しろ)、君(きみ)に事(つか)えんことを問(と)う。
子(し)曰(いわ)く、
欺(あざむ)く勿(なか)れ。而(しか)して之(これ)を犯(おか)せ。


注釈:

  • 欺く勿れ … 主君に対して、二心を持ったり、表面を取り繕ったりせず、まごころをもって仕えること。
  • 犯せ … 君主の過ちを、恐れずに諫めること。相手の不興や怒りを買う可能性を承知の上で行動する勇気。

教訓:

この章句が語るのは、忠誠とは「黙って従う」ことではなく、正しいと信じることを進言することにこそあるということです。

  • 誠実さのない忠言は、信じてもらえない。
  • 諫言を行うためには、まず「信頼される姿勢」が必要である。

だからこそ、まごころに基づいた忠義が、
「言うべきことを、言うべき時に、恐れずに言える強さ」へとつながるのです。

1. 原文

子路問事君。子曰、勿欺也、而犯之。


2. 書き下し文

子路(しろ)、君に事(つか)えんことを問う。
子(し)曰(いわ)く、欺(あざむ)く勿(なか)れ。而(しか)して之(これ)を犯(おか)せ。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)

「子路、君に事えんことを問う」
→ 子路が「君主に仕えるにはどうすればよいか」と孔子に尋ねた。

「欺く勿れ」
→ 孔子は答えた。「主君を欺いてはならない。」

「而して之を犯せ」
→ 「そして、必要であれば主君の誤りを正面から諫めよ(=あえて犯せ)。」


4. 用語解説

  • 事君(しくん):君主に仕える、つまり主君に忠誠をもって仕えること。
  • 欺(あざむ)く:本心を隠して媚びる、ごまかす、へつらうこと。
  • 犯(おか)す:ここでは“犯す”というより、「真っ向から意見を述べ、主君の誤りを諫める」という意味で使われている。正面から向き合うこと。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

子路が「君主に仕えるにはどうすればよいですか」と尋ねたところ、
孔子はこう答えた:

「決して主君を欺いてはならない。
そして、主君に過ちがあれば、たとえ相手が君であっても、
正々堂々とそれを指摘し、諫めなさい。」


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「忠誠とは、へつらうことではなく、正義をもって仕えること」**を明確に示しています。

  • 孔子は、表面的に従順なだけの部下を「誠実な臣」とは認めていません。
  • 真に忠義ある部下とは、主君を欺かず、必要な時には勇気をもって誤りを正す人
  • この教えは、単なる上下関係ではなく、リーダーと部下の関係における“信義”のあり方を表しています。

7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

✅「上司に忠誠を誓うとは、“耳ざわりの良いことだけ言う”ことではない」

  • 本当に上司を思うなら、間違っているときにそれを指摘することが真の忠誠
  • 意見を控え、波風を立てないことが“忠”ではない。

✅「“欺かず、犯す”──部下の本当の価値は“進言力”にある」

  • 部下がリーダーに忖度しすぎてしまえば、組織の健全性が失われる。
  • 真に優れた部下は、正しいと思うことを、信頼と誠意をもって伝えられる人物

✅「リーダー側も、“諫めを受け入れる器”を持つべき」

  • 孔子の教えを生かすには、リーダーが部下からの諫言を歓迎する文化も不可欠。
  • 組織として、「意見が言いやすい」「意見が通じる」環境を作ることが重要。

8. ビジネス用の心得タイトル

「欺かず、諫める勇気──忠誠は正直な進言に宿る」


この章句は、組織の中での“本当の忠誠心”とは何かを問う、
非常に力強い倫理的メッセージを持っています。

忖度ではなく、誠実な対話と進言がある組織──
それこそが、孔子が理想とした“徳ある関係”のあり方です。

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