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教養なき兵に、真の強さはない

――人を育ててこそ、国も軍も立つ

孔子はこう説いた:

善人(ぜんにん)が、民を七年ほど教育・訓練すれば、
彼らは国難のとき、戦に従事させることができるようになる。」

つまり、国を守る軍隊を強くするには、まず民を育てることが必要なのだ。
戦う以前に、民としての品性・理解・責任感が備わってこそ、
その軍隊は統制と誇りを持ち、危機に対応する力を発揮できる。

武器を持つだけでは、強い軍にはならない。
民の教育こそ、国防の根幹である――これは、孔子が理想とした「文徳による国家づくり」の一環でもある。


原文とふりがな付き引用:

「子(し)曰(いわ)く、善人(ぜんにん)が民(たみ)を教(おし)うること七年(しちねん)ならば、
亦(また)以(もっ)て戎(じゅう)に即(つ)かしむべし。


注釈:

  • 善人(ぜんにん) … 優れた徳を持ち、人を導ける人物。ここでは有能な教育者や指導者の意。
  • 教う(おしう) … 教育し、訓練すること。単なる知識でなく、人格形成を含む。
  • 七年(しちねん) … 充分な時間をかけて人を育てる年月。短期の即席ではない。
  • 戎(じゅう)に即く … 軍務に就くこと。戦争や国防に従事する。

1. 原文

子曰、善人教民七年、亦可以即戎矣。


2. 書き下し文

子(し)曰(いわ)く、善人(ぜんにん)、民(たみ)を教(おし)うること七年(しちねん)ならば、
亦(また)以(もっ)て戎(じゅう)に即(つ)かしむべし。


3. 現代語訳(逐語訳/一文ずつ)

  • 「孔子は言った:善良な人物が民を教え導くことを七年間行えば、」
     → 「徳のある人物が民衆を7年教育すれば、」
  • 「戦に就かせることも可能となるだろう」
     → 「戦場に出しても恥じないような人物に育てられる。」

4. 用語解説

  • 善人(ぜんにん):ここでは「徳ある教育者」、人格者。単に善良という意味ではなく、「徳と識見を備えた立派な人」。
  • 教民七年:7年にわたって民衆を教育すること。儒教的には「礼・仁・義・忠」などの徳目を含む人間教育を指す。
  • 戎(じゅう)に即かしむ:軍務に就かせる、戦争に参加させる。単なる徴兵ではなく、国家のために戦える品格と意識を備えた人間に育てることを意味する。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

孔子はこう言った:

「人格ある教育者が民衆を7年きちんと教育すれば、
彼らを戦場に送り出しても恥ずかしくない、立派な兵士に育つだろう。」


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「軍事・戦争という現場においても、“人間教育”が最も重要である」**という、
孔子の一貫した「徳治主義」の立場を明確に示しています。

  • 単なる戦闘技術や体力ではなく、人格・規律・忠義・正義感を育てることが兵士の基礎
  • そのためには、「優れた教育者」が7年かけて教える必要があるという、人材育成に対する長期的・本質的視点を提示しています。

7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

  • 「即戦力より、基礎力の育成が本物の戦力を生む」
     短期研修やOJTで“即現場投入”するより、長期的視点で徳・判断力・組織意識を育てる人材育成が不可欠。
  • 「教育に7年かける覚悟が人を変える」
     “早く使えるように”ではなく、“10年後にも活躍できる人材”を育てる視点が、組織の質を変える。
  • 「戦える人材は、教養ある人材」
     現代の“戦い”は、商談・交渉・プレゼンなど多様だが、判断力・倫理観・他者尊重といった教養が根底にあることが成功の鍵。
  • 「教える者の徳が、人を育てる」
     どんなにプログラムが整っていても、“教える側の人格”が育成成果を左右する

8. ビジネス用の心得タイトル付き

「人を育てる7年の力──“徳ある教育者”が真の戦力をつくる」


この章句は、**「人材とは育ててこそ真価を発揮する」**という、あらゆる時代と職種に通じる普遍的な真理を示しています。


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