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飾らず、ぶれず、静かに強く――そういう人は「仁」に近い

――本当の優しさは、静かな芯の強さから生まれる

孔子は、「仁(じん)」に近づくための具体的な人柄を四つ挙げて、こう言った。

剛・毅・木・訥(ごう・き・ぼく・とつ)なる者は、仁に近い。

この四つの性質は、それぞれが徳の土台となる資質である:

  • 剛(ごう) … 意志が強く、欲や誘惑に屈しない。
  • 毅(き) … 高い志を持ち、困難にも負けない勇気。
  • 木(ぼく) … 素朴で、飾らず、虚栄を求めない。
  • 訥(とつ) … 多弁ではなく、慎重に言葉を選ぶ沈黙の徳。

孔子が説いた「仁」は、単なる優しさではなく、自分を律する内なる強さを伴った徳である。
言葉巧みで目立つ者よりも、黙々と真っ直ぐに生きる人こそ、仁にふさわしいとされた。

華やかさよりも、静かな真実にこそ、本当の人格は宿る――
それがこの一句の核心である。


原文とふりがな付き引用:

「子(し)曰(いわ)く、剛(ごう)、毅(き)、木(ぼく)、訥(とつ)なるは、仁(じん)に近(ちか)し。


注釈:

  • 剛(ごう) … 精神的に強く、節を曲げないこと。
  • 毅(き) … 志を貫く強さ。断じて行う力。
  • 木(ぼく) … 素朴、無欲。虚飾のない人柄。
  • 訥(とつ) … 無口、寡黙だが誠実。言葉より行いを重視。

1. 原文

子曰、剛毅木訥、近仁。


2. 書き下し文

子(し)曰(いわ)く、剛(ごう)、毅(き)、木(ぼく)、訥(とつ)なるは、仁(じん)に近(ちか)し。


3. 現代語訳(逐語訳/一文ずつ)

  • 「孔子は言った:剛、毅、木、訥なるは仁に近し」
     → 強く(剛)、意志が強く(毅)、素朴で飾らず(木)、言葉少なく慎み深い(訥)人は、
     仁(思いやりや誠実さ)に近い人物だ

4. 用語解説

  • 剛(ごう):強く屈しない性格。原則を曲げず、耐える力がある。
  • 毅(き):意志が強く、決めたことを貫く精神力。
  • 木(ぼく):素朴、飾らない性格。洗練されていないが誠実。
  • 訥(とつ):言葉が拙くても慎み深く、軽々しく喋らない態度。
  • 仁(じん):孔子が最も重んじた徳。思いやり・誠実さ・他者との調和的関係。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

孔子はこう言った:

「強く、意志が強く、素朴で、口数が少ない人は、“仁”に近い人格者である。」


6. 解釈と現代的意義

この章句は、「表面的な巧さ」よりも「内面的な誠実さ・一貫性・節度」が人徳を形づくるという孔子の信念を示しています。

  • 見た目や弁舌に優れる人より、堅実・誠実・控えめな人の中に本当の“仁”が宿る。
  • また、「訥」=口下手なことを欠点とせず、“軽々しく語らない慎重さ”を徳とする視点が新鮮です。
  • 「仁に近し」という表現に留めているのも、孔子らしい謙虚さです。

7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

  • 「派手さより“実直”が信頼を生む」
     華やかな経歴やプレゼンの巧さより、ぶれない芯と慎重な判断力を持つ人材が、組織を安定させる。
  • 「口数少なくとも、実行力ある人を評価すべき」
     発言回数ではなく、黙々と結果を出す人、信念を貫く人を見抜き、適切に評価・登用することがマネジメントの要。
  • 「仁に近づく“態度の徳”を育てる組織文化」
     すぐに喋らず、即答せず、慎重に答える人を尊重する風土が、深い思考と誠実な行動を育てる。
  • 「強さと柔らかさの両立」
     “剛”と“毅”は意志と原則、“木”と“訥”は誠実と慎重さ――この両者をバランスよく持つ人が、仁に近いリーダーとなる。

8. ビジネス用の心得タイトル付き

「強く、静かに、誠実に──“仁に近づく人”の4つの徳」


この章句は、「声の大きい人がリーダーになる」ような風潮に警鐘を鳴らし、
内面の堅実さ・素朴さ・節度こそが真の徳に通じることを教えてくれます。


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