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落ち着きは、いばりとは違う

――本物の徳は、静かににじみ出る

孔子は、人のあり方について簡潔に、しかし深くこう語った。

君子(くんし)は、ゆったりと落ち着いていて、いばらない。
小人(しょうじん)は、いばって見せるが、心にはゆとりがない。

つまり、君子は内に徳を備えているからこそ、無理に誇示する必要がなく、どっしりと構えている
一方で、小人は内に確固たるものがないために、自分を大きく見せようと威張る
だがその態度には、落ち着きも、安心感も伴っていない。

本当の自信とは静かなものであり、
本当の徳とは、余裕・安定・威圧せぬ存在感としてあらわれる。
孔子のこの一言は、リーダーシップ・人間性・信頼の本質を簡明に表している。


原文とふりがな付き引用:

「子(し)曰(いわ)く、君子(くんし)は泰(たい)くして驕(おご)らず。
小人(しょうじん)は驕りて泰からず。


注釈:

  • 泰(たい)くする … 心に余裕があり、どっしりと落ち着いていること。態度に威圧感はない。
  • 驕る(おごる) … 自分を高く見せ、他者を見下すような態度。威張ること。
  • 君子(くんし) … 高い徳と品位を備えた理想の人物。
  • 小人(しょうじん) … 見識や徳に欠ける、自己中心的な人。

1. 原文

子曰、君子泰而不驕、小人驕而不泰。


2. 書き下し文

子(し)曰(いわ)く、君子(くんし)は泰(たい)くして驕(おご)らず。
小人(しょうじん)は驕りて泰からず。


3. 現代語訳(逐語訳/一文ずつ)

  • 「君子は泰くして驕らず」
     → 立派な人は、落ち着いて堂々としているが、傲慢ではない。
  • 「小人は驕りて泰からず」
     → つまらない人は、横柄な態度はとるが、内心は落ち着かず、安定していない。

4. 用語解説

  • 君子(くんし):徳を備えた理想的人物。内面と行動に品格がある人。
  • 小人(しょうじん):徳を欠き、利己的で視野が狭い人。
  • 泰(たい)くする:精神的にゆとりがあり、落ち着いて安定していること。態度が自然体で穏やか。
  • 驕る(おごる):傲慢になる。他人を見下すような態度や言動。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

孔子はこう言った:

「君子は内面に余裕があり、穏やかで安定しているが、驕り高ぶることはない。
一方、小人は尊大な態度をとるが、内面は不安定で落ち着きがない。」


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「態度の表れは内面の反映である」**という、孔子の人間観を簡潔に表したものです。

  • 君子の**“泰”は、知識や経験、徳の積み重ねにより生まれる本物の自信と落ち着き**。
  • 小人の**“驕”は、自分を大きく見せようとする虚勢や不安の裏返し**。
  • 「余裕があるからこそ、謙虚でいられる」という逆説が、孔子の美徳観の核心です。

7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

  • 「本物のリーダーは謙虚で穏やか」
     肩書や権限を振りかざすのではなく、態度に自然な余裕と丁寧さがある人ほど信頼される。
  • 「自信なき人ほど声が大きくなる」
     小人は、自らの不安を隠すために強く出たり威圧的になるが、本質的には未熟さの表れ
  • 「組織文化に“泰”を育てる」
     成果主義だけに偏らず、徳や人間的成長を重視する風土が、安心感と自律をもたらす。
  • 「本当に優れた人ほど腰が低い」
     スキルや経験がある人ほど、他者への敬意と謙虚さを忘れない。それが“泰”の表現。

8. ビジネス用の心得タイトル付き

「本物の余裕は静かに現れる──“泰して驕らず”が信頼の源」


この章句は、「態度の品格は、内面の安定から生まれる」という普遍的な真理を端的に表現しています。
リーダーシップの本質・人材の見極め・信頼構築の原則として現代にも応用可能です。

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