孔子は、当時の二つの国の状態を引き合いに出して、**「変化」と「理想」についての希望」を語った。
「斉(せい)の国が少しでも改善されれば、魯(ろ)の国くらいにはなれるであろう。
そして、魯の国がもうひとつ変化すれば、“道(みち)”の通った理想の国に至るであろう」
ここで孔子は、完全な改革や理想を一足飛びに求めているのではなく、“一変”――つまり、一つの大きな改善があれば前進できるという、段階的な理想への道筋を示している。
これは国政に限らず、人間の成長や社会の進歩にもあてはまる普遍的な考え方である。
「今のままではだめだ」と嘆くのではなく、「あと一歩の変化があれば、より良くなれる」と信じ、行動する――
理想を遠くに描きながらも、目の前の“変化すべき一つ”に向き合う姿勢こそが、道に至る鍵なのだ。
ふりがな付き原文
子(し)曰(いわ)く、
斉(せい)、一変(いっぺん)せば魯(ろ)に至(いた)らん。
魯、一変すれば道(みち)に至らん。
注釈
- 斉(せい):戦国時代の大国。政治は強いが、倫理や礼に欠ける面があった。
- 魯(ろ):孔子の故郷であり、礼を重んじるが力の弱い小国。理想にはまだ一歩足りない国とされた。
- 一変(いっぺん):一つの大きな変化・改革。根本的ではないが、重要な改善。
- 道(みち):理想の政治、倫理、秩序が整った世界。孔子の理想とする「徳治国家」。
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