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人を用いるには、まずその人を見る目を養え

孔子の弟子・子游(しゆう)が、魯の武城(ぶじょう)の長官に就任したとき、孔子はこう尋ねた。

「よい部下は得られたか?」

子游は即座に答えた。

澹台滅明(たんだいめつめい)という人物がおります。
彼は常に大道を通って歩き、近道(抜け道)を使うようなことは決してしません。
また、公務以外で私の部屋に来たこともなく、私的な関係を結ぼうともしません。
公明正大で、信頼できる人物です」

これは、人物評価の本質を孔子が弟子に問うた、非常に示唆に富む場面です。
単に仕事ができるかどうかではなく、その人の姿勢や日常の行動からにじみ出る誠実さと品格こそが、用いるべき人材の条件であるということを、子游は理解し、実行していました。

人を見抜くとは、言葉ではなく、その人の“ふるまい”を見ること。
たとえ目立たなくても、道を外さず、私利私欲に流されない人物こそ、本当に頼るべき人なのです。


ふりがな付き原文

子游(しゆう)、武城(ぶじょう)の宰(さい)と為(な)る。
子(し)曰(いわ)く、女(なんじ)、人(ひと)を得(え)たるか。
曰(いわ)く、澹台滅明(たんだいめつめい)なる者有(あ)り。
行(ゆ)くに径(こみち)に由(よ)らず。
公事(こうじ)に非(あら)ざれば、未(いま)だ嘗(かつ)て偃(えん)の室(しつ)に至(いた)らざるなり。


注釈

  • 子游(しゆう):本名は言偃(げんえん)。孔子の高弟の一人。教育や地方行政に力を発揮した。
  • 澹台滅明(たんだいめつめい):字は子羽(しう)。孔子の晩年の弟子。慎み深く、品格ある人物として知られる。
  • 行くに径に由らず:近道(便宜主義)を避け、正しい道を選ぶ姿勢の象徴。
  • 公事に非ざれば〜:公務以外で上司のもとに行かないという態度から、公私の区別を厳しく守る人物像が浮かび上がる。
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