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「できない」のではなく、「やめている」――限界を決めているのは自分自身

孔子の弟子・冉求(ぜんきゅう)は、あるときこう言った。

「私は先生の教えに感動し、それを喜んで学んでおります。ですが、自分には力が足りず、ついていけません」

それを聞いた孔子は、明確な言葉で返した。

「もし本当に力がないのであれば、やがて道半ばで倒れてしまうだろう。
だが今のお前は、そこにたどり着く前に、自分で『このくらいが限界だ』と線を引いてやめてしまっている。
それは力が尽きたのではなく、自分で限界を決めたに過ぎないのだ」

これは、私たちがしばしば陥りがちな「自己限定」への厳しくも温かい警鐘である。
本当の力の限界は、歩みを止めたその先にある。
挑戦をやめてしまえば、それ以上の自分には出会えない

孔子がここで伝えたのは、能力の有無ではなく、姿勢の問題。
たとえ未熟でも、歩き続ける者だけが進化する。
だからこそ、「自分には無理だ」とあきらめる前に、せめて「そこまでやりきったか?」と自分に問うてみるべきなのだ。


ふりがな付き原文

冉求(ぜんきゅう)曰(いわ)く、子(し)の道(みち)を説(よろこ)ばざるに非(あら)ず、力(ちから)足(た)らざるなり。
子(し)曰(いわ)く、力の足らざる者は、中道(ちゅうどう)にして廃(はい)す。
今(いま)、女(なんじ)は画(かぎ)る。


注釈

  • 冉求(ぜんきゅう):孔子の弟子。多才で実務にも長けていたが、自分に厳しい性格であった。
  • 中道にして廃す:本当に力が尽きた者は、道半ばでやむを得ず挫折するという意味。
  • 画る(かぎる):自分で限界を線引きして、そこまでと決めてしまうこと。自己制限。

1. 原文

冉求曰、非不説子之道、力不足也。
子曰、力不足者、中道而廢。今女畫。


2. 書き下し文

冉求(ぜんきゅう)曰(いわ)く、子(し)の道(みち)を説(よろこ)ばざるに非(あら)ず。力(ちから)足(た)らざるなり。
子(し)曰(いわ)く、力の足らざる者は、中道(ちゅうどう)にして廃(はい)す。今(いま)、女(なんじ)は画(はか)るなり。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 冉求曰く、子の道を説ばざるに非ず、力足らざるなり。
     → 弟子の冉求は言った。「先生の教えが気に入らないわけではありません。ただ、自分にはその道を実践する力が足りないのです。」
  • 子曰く、力の足らざる者は中道にして廃す。
     → 孔子は言った。「本当に力が足りない者は、努力してみて途中で挫折するものだ。」
  • 今、女は画るなり。
     → 「しかしお前は、やる前から“自分には無理だ”と線を引いてしまっている。」

4. 用語解説

  • 冉求(ぜんきゅう):孔子の弟子。実務能力に長け、政治的実績もあるが、精神的成熟には課題があったとされる。
  • 説(よろこ)ぶ:満足する、賛同する、気に入るという意。
  • 力不足(りょくぶそく):体力や能力に限らず、精神力・気力・持続力も含む。
  • 中道にして廃す(ちゅうどうにしてはいす):道の途中で挫折すること。やれるだけやって力尽きる姿。
  • 画る(はかる):境界線を引く。ここでは「できる範囲を自分で決めてしまう」「限界を先に定める」という否定的意味。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

冉求はこう言った。
「私は先生の教えを好まないわけではありません。ただ、自分にはそれを実践する力が足りないのです。」

それに対して孔子はこう答えた。
「本当に力が足りない者は、一度挑戦して、途中で力尽きてやめるものだ。
しかしお前は、挑戦する前から“自分には無理だ”と限界を設けてしまっている。」


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「本当の力不足とは何か」**という問いに対する孔子の鋭い洞察を示します。

  • 孔子の主張は明確です:
     「やってみて失敗するのは仕方ない。だが、最初から自分に線を引くことこそ“本当の力不足”である」。
  • “限界”は自分で決めるものではない。
     本当に挑戦してみないと、力があるかどうかはわからない。
     挑戦しない言い訳として「力が足りない」というのは、逃避に過ぎない。
  • 現代においても、これは自己肯定感や挑戦力、成長マインドセットの根幹に関わる教えです。

7. ビジネスにおける解釈と適用

● 「やる前に“無理”というな──真の力不足は線を引く心にある」

  • 挑戦を拒む姿勢こそ、成長の最大の障壁。
  • 経験不足や知識不足は補えるが、自己規定・挑戦忌避の姿勢は変革を拒む要因

● 「“中道にして廃す”人は、前向きな失敗から学べる人材」

  • 最初から“やらない”人と、挑戦した上での挫折者とでは、組織への貢献も成長のポテンシャルも全く違う。

● 「自分で可能性に線を引くな──上司の指導の視点として」

  • 「無理です」と言う部下には、「どこまでやった?」と問い直すことが重要。
  • 可能性を信じて“やってみる文化”を育むリーダーシップが求められる。

8. ビジネス用の心得タイトル付き

「力不足の本質は“挑まぬ心”にあり──限界線を引くな」


この章句は、**「自分の限界は自分が決めているにすぎない」**という厳しくも前向きな人生の真理を孔子が語ったものです。
新人育成、キャリア形成、チャレンジ促進プログラムなど、多様な教育シーンに活用可能です。

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