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身分を超えて学ぶ者こそ、真に優れた人物である

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学ぶことに上下はない。問いを恥じぬ者にこそ「文」の徳が宿る

子貢が孔子に、「孔文子(こうぶんし)はなぜ“文”という諡(おくりな)を得たのですか」と尋ねた。
孔子はこう答えた――
「彼は理解が早く、学ぶことを好み、自分より位の低い者にも教えを請うことを恥としなかった
それゆえに、“文”という諡を贈られたのだ」と。

「文」とは、知識を積み重ね、礼儀を尽くして道理にかなった人物に贈られる最上級の称号である。
ここで孔子が示したのは、地位の上下や年齢にとらわれず、よいと思うことは誰からでも学ぼうとする謙虚さこそが、真の賢者の姿だということである。
部下・後輩・年少者からでも素直に学び、そこに恥じらいを持たない人間こそが、「文」の名にふさわしい人物なのである。

立場の上下に関係なく学ぶ者にこそ、
最も尊い「文」の名が贈られる。

原文

子貢問曰、「孔文子何以謂之文也?」
子曰、「敏而好學、不恥下問、是以謂之文也。」

書き下し文

子貢(しこう)、問うて曰(いわ)く、
「孔文子(こうぶんし)は、何(なに)を以(もっ)てか之(これ)を文(ぶん)と謂(い)うや。」

子(し)曰(いわ)く、
「敏(びん)にして学(がく)を好(この)み、下問(かもん)を恥(は)じず。是(これ)を以(もっ)て之を文と謂うなり。」

現代語訳(逐語・一文ずつ訳)

「子貢問曰、孔文子何以謂之文也」

→ 子貢は尋ねた。「孔文子は、なぜ“文”という諡(おくりな)で呼ばれているのですか?」

「子曰、敏而好學、不恥下問、是以謂之文也」

→ 孔子は答えた。「彼は聡明で学問を好み、自分より位の低い者に教えを請うことを恥じなかった。だから“文”と呼ばれるのだ。」

用語解説

  • 孔文子(こうぶんし):孔圉(こうぎょ)という名の春秋時代・衛の大夫(諸侯の臣)。死後に「文」という諡(し)が贈られた。
  • 文(ぶん):博識・教養・礼儀・学問の徳がある人に贈られる諡号。
  • 敏(びん):賢く鋭いこと。理解力や反応が早いさま。
  • 好学(がくをこのむ):学ぶことを好む、努力して知識を深める姿勢。
  • 下問(かもん):自分より身分・地位が低い者に教えを乞うこと。

全体の現代語訳(まとめ)

子貢が孔子に「孔文子が“文”と呼ばれるのはなぜでしょうか」と尋ねた。
孔子は答えた:
「彼は聡明で学ぶことを好み、自分より地位の低い者に対しても教えを請うことを恥じなかった。だからこそ“文”と称されたのだ。」

解釈と現代的意義

この章句には、「文(知性と教養)」の本質は“謙虚さと探究心”にあるという儒教的な価値観が凝縮されています。

  • 単に学識があることではなく、**「学び続ける姿勢」**こそが「文」の本質である。
  • とりわけ、「自分より下の者に教えを請う」ということを恥じない姿勢は、**真に優れた人物に必要な“自己超越”**を示している。
  • 「文」は表面的な“飾り”や“礼儀作法”ではなく、内面から滲み出る知性と謙虚さの融合であると示唆されています。

ビジネスにおける解釈と適用

「地位が上がるほど、“下問”の姿勢を忘れるな」

上司やリーダーは、知らないことを部下に聞くのを恥じるべきではない。
むしろ、“知らないことを素直に尋ねられるリーダー”こそが、信頼を集める。

→ “謙虚な知性”こそが、真に尊敬されるリーダーの条件。

「“学び続ける力”が、職業人としての教養をつくる」

変化の激しい現代社会においては、学び続ける柔軟性がなければすぐに取り残される。
孔子の言う「文」は、生涯を通じて自己成長し続ける姿勢でもある。

→ 知識の深さより、“学び続ける習慣”の有無がプロフェッショナルの質を決める。

まとめ

「問うことを恐れず、学び続けよ──“文”とは謙虚な知の姿勢」

この章句は、「知性と教養」がどのようにして培われるかを教える普遍的な教訓です。
表面的な学歴や資格ではなく、“謙虚に学び続ける姿勢”こそが本当の教養を生むという孔子のメッセージは、現代においても変わらぬ価値を持ちます。

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