真に優れた人(君子)は、考え方や立場の異なる人とも広く交わり、偏りなく人間関係を築いていく。
それに対して、小人は自分の利にかなう者とだけつるみ、狭い世界に閉じこもる。そこには誠実なつながりも成長もない。
交際の広さは、人格の器を映す鏡である。利害を超え、心の通った関係を結べる人でありたい。
付き合いは広く、しかし節度を持って。
損得だけの交際は、真の人間関係を腐らせる。
原文:
「子曰、君子周而不比、小人比而不周。」
書き下し文:
「子(し)曰(いわ)く、君子(くんし)は周(しゅう)して比(ひ)せず。小人(しょうじん)は比して周せず。」
現代語訳(逐語/一文ずつ訳):
- 「子曰く」
→ 孔子は言った。 - 「君子は周して比せず」
→ 君子(人格者)は広く人と親しくするが、徒党(えこひいき)を組まない。 - 「小人は比して周せず」
→ 小人(徳のない人)は身内びいきして徒党を組むが、広くは親しまない。
用語解説:
- 君子(くんし):高い道徳性・教養・責任をもつ理想的な人物。
- 小人(しょうじん):視野が狭く私利私欲に走る小人物、利己的な人。
- 周す(しゅうす):広く公平に交わる。人間関係において開かれていること。
- 比す(ひす):偏って親しむ、仲間うちで固まる、徒党を組む、派閥を作る。
全体の現代語訳(まとめ):
孔子はこう言った:
「君子は誰に対しても広く公平に親しくするが、えこひいきをしたり徒党を組んだりはしない。
一方、小人は身内だけで固まり徒党を組むが、広く人と交わることはしない。」
解釈と現代的意義:
この章句は、「人間関係における公平さと閉鎖性の違いが、人格の優劣を分ける」という教えです。
- 君子は偏見なく人と交わる「公の精神」を持っている。
- 一方、小人は内輪の利益を優先し、「自分たちだけ」の狭い人間関係に陥る。
- 孔子はここで、信頼・協調・公平性の価値を重視し、排他的な仲間意識や派閥主義を戒めている。
ビジネスにおける解釈と適用:
- 「オープンな信頼関係を築く人がリーダー」
- 組織の中で広く意見を聞き、偏らずに人と接する人が、チームからの信頼を集める“君子”型の人物。
- 情報を一部の人にしか共有しないリーダーは、組織の分断を生む。
- 「派閥・身内主義は“組織の小人化”を招く」
- 一部の人間だけが優遇される風土では、組織の健全性・透明性が失われる。
- 公平で風通しのよい関係性が心理的安全性やイノベーションを促す。
- 「チームづくりは“周して比せず”を目指すべき」
- 親しさを広く持ちつつも、一部に肩入れしない公平性を保つことが、健全なチーム文化の鍵。
- 上司・先輩は、人を“私的好み”でなく“公的評価”で見る姿勢が求められる。
ビジネス用心得タイトル:
「広く親しみ、狭く固まらず──公平な関係こそ組織の徳を育てる」
この章句は、人間関係・組織風土・リーダーシップの在り方に深く根ざした教訓です。
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