親にとって何よりも気がかりなのは、子の健康である。
立派なことを成すよりも、贈り物をするよりも、まずは元気で生きていてくれること――それが何よりの安心であり、親孝行となる。
心を尽くしても、身体を粗末にしては本末転倒である。親に憂いを与えぬことこそ、最も根本的な孝の姿である。
親が本当に願っているのは、子が健やかであること。それは普遍の真理である。
目次
原文
孟武伯問孝、子曰、父母唯其疾之憂、
「孟武伯(もうぶはく)、孝(こう)を問(と)う。子(し)曰(いわ)く、父母(ふぼ)は唯(ただ)其(そ)の疾(やまい)を之(これ)憂(うれ)う。」
現代語訳(逐語/一文ずつ訳):
- 「孟武伯、孝を問う」
→ 孟武伯が孔子に「孝」について尋ねた。 - 「子曰く、父母は唯だ其の疾を之れ憂う」
→ 孔子は言った:「親が最も心配するのは、子どもの病や身体の不調である。」
用語解説:
- 孟武伯(もうぶはく):魯の貴族・政治家。孔子の教えをよく問うた人物。
- 孝(こう):親を敬い仕える心と行動。儒教における最重要徳目の一つ。
- 唯(ただ):ひたすら、まさに。
- 疾(やまい):病気、健康状態の悪さ。
- 憂う(うれう):心配する、不安に思う。
全体の現代語訳(まとめ):
孟武伯が「孝とは何か」と尋ねたとき、孔子は「親が一番気にかけるのは、子どもの健康である」と答えた。
解釈と現代的意義:
この一節は、「孝」とは大仰な行為ではなく、親の心を理解し、安心させることに本質があるという孔子の繊細な理解を示しています。
- 孝行とは、単に仕えることや物を与えることではなく、「親の心配を取り除くこと」である。
- 親にとって最大の不安は「子どもの体調や安全」であり、それに気を配ることが何よりの孝である。
- 孝の本質は“思いやり”と“安心の提供”である。
ビジネスにおける解釈と適用:
- 「上司・顧客の“本当の関心”に応えることが真の貢献」
- 表面的な成果や形だけの報告よりも、相手が本当に気にしていること(リスク・健康・継続性)に対して安心を与える行動が重要。
- 「配慮とは“何をするか”より“何を感じ取るか”」
- 孝とは贈り物や仕草の問題ではなく、「親の不安に気づいて応えること」。
- ビジネスにおいても、「上司が何を気にしているか」「お客様がどこに不安を抱えているか」に気づける人が信頼される。
- 「健康・安全・持続性への配慮が信頼の核心」
- 自分自身が健康であること、チームが安定していることは、組織に安心を与える“見えない信頼資産”である。
ビジネス用心得タイトル:
「安心を与えることが、最大の信頼──相手の“憂い”を読み取る配慮を」
この章句は、親子関係にとどまらず、人間関係・組織運営・サービスの本質に迫るものです。
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