MENU

親を敬う心は、礼を尽くすことで形になる

親孝行とは、ただ気持ちだけで果たされるものではない。親が生きている間は、礼に則って仕え、敬意と節度をもって接する。

親が亡くなった後も、葬送や祭祀のすべてにおいて、礼を守ることが大切である。

権力や立場によって礼のかたちを軽んじることなく、正しい形式を守ることでこそ、孝の心が真に表れる。

孝とは、私情や立場に流されず、節度を守り抜く態度である。それは心のかたちを、礼を通して表すことである。

敬と節で仕え、終わりまで礼を尽くす──真の忠誠は原則を守るところにある。

目次

原文

孟懿子問孝、子曰、無 、樊遲御、子 之曰、孟孫問孝於我、我對曰、無 、樊遲曰、何謂也、子曰、生事之以禮、死葬之以禮、祭之以禮、

孟懿子(もういし)、孝(こう)を問う。子(し)曰(いわ)く、違(たが)うこと無(な)かれ。

樊遲(はんち)、御(ぎょ)たり。子、之(これ)に告(つ)げて曰(い)わく、孟孫(もうそん)、孝を我に問いしに、我、対(こた)えて曰(い)わく、違うこと無かれ、と。

樊遲曰(いわ)く、何の謂(い)いぞや。子曰(いわ)く、生(い)きては之(これ)に事(つか)うるに礼(れい)を以(もっ)てし、死(し)しては之を葬(ほうむ)るに礼を以てし、之を祭(まつ)るに礼を以てす。

現代語訳(逐語/一文ずつ訳):

  1. 「孟懿子、孝を問う」
     → 孟懿子が孔子に孝について尋ねた。
  2. 「子曰く、違うこと無かれ」
     → 孔子は答えた。「親に対して道に外れることがないようにせよ」と。
  3. 「樊遲、御たり」
     → 弟子の樊遲が車を運転していた(その場にいた)。
  4. 「子之に告げて曰く、孟孫、孝を我に問いしに…」
     → 孔子が彼に言った。「孟孫が私に孝について尋ねたとき…」
  5. 「我、対えて曰わく、違うこと無かれと」
     → 「私は『道を外れてはならない』と答えたのだ。」
  6. 「樊遲曰く、何の謂いぞや」
     → 樊遲が尋ねた。「それはどういう意味ですか?」
  7. 「子曰く、生きては之に事うるに礼を以てし…」
     → 孔子は言った。「生きている間は礼をもって親に仕え…」
  8. 「死しては之を葬るに礼を以てし…」
     → 「亡くなったあとは礼をもって葬り…」
  9. 「之を祭るに礼を以てす」
     → 「また、亡き親を礼をもって祭るべきである。」

用語解説:

  • 孝(こう):親を敬い、尽くす徳。儒教における基本徳の一つ。
  • 無違(むい):「道理・礼」に反しないこと。親の言葉に無批判に従うのではなく、礼に則って親に仕えること。
  • 御(ぎょ):馬車を運転すること。ここでは「同席していた」ことを示す。
  • 事う(つかう):仕える、奉仕する。
  • 礼(れい):形式的な作法だけでなく、内面的な敬意と節度を表す行動規範。
  • 葬(ほうむ)る・祭る:儀礼を通して親を尊ぶことを示す。

全体の現代語訳(まとめ):

孟懿子が「孝」について尋ねたとき、孔子は「道を外れてはならない」と答えた。弟子の樊遲がその意味を問うと、孔子は「親が生きている間は礼をもって仕え、亡くなったら礼をもって葬り、礼をもって祭ること」と説明した。

解釈と現代的意義:

この一節は、孝とは盲目的な従属ではなく、節度と敬意に裏打ちされた実践であることを説いています。

  • 孝の本質は、「親の命令に従うこと」ではなく、「礼によって親を尊び、その人生に節度をもって寄り添うこと」。
  • 死後も礼を尽くすことで、「親との関係」は生前だけでなく、人格的成長の一部として継続する。

つまり、形式ではなく精神を重んじる孝のあり方を示した言葉です。

ビジネスにおける解釈と適用:

  1. 「生きては之に事うるに礼を以てす」=敬意ある上司・顧客対応
    • 働いている相手に「従う」のではなく、「敬意と節度をもって対応する」姿勢が求められる。
    • 指示や期待にただ応えるのではなく、**自分の節度ある判断と態度で応じることが“礼”**である。
  2. 「死して葬り、祭るに礼を以てす」=終わり・別れを丁寧に扱う
    • 退職者・顧客との契約終了など、「関係の終わり」も敬意と感謝をもって対応する。
    • 組織における別れの美学=礼が、文化と信頼をつくる。
  3. 「無違」=原則を持って仕える
    • 会社・上司・顧客に仕えるとしても、道理・信義・原則に反しない仕え方が重要
    • YESマンではなく、「節度と信念をもって仕える人材」が信頼される。

まとめ

この章句は、上下関係・顧客関係・組織文化において、“尊重と礼の精神”を基盤とした関係性の構築において非常に重要です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次