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約束は義に従い、敬意は礼に従ってこそ価値がある

人との約束ごとは、まず道理にかなっているかを見極めることが大切である。ただ盲目的に約束を守るのではなく、それが義に近いならばこそ、言葉を守るに値する。
また、人とのつき合いにおいて敬意を払うのは良いことだが、それも礼にかなってこそ意味を持つ。行き過ぎた謙りや卑屈な態度は、むしろ恥を招くものである。
つき合う相手や親しむ人を見誤らず、正しく関係を築ける者こそ、信頼の軸となるべき人である。

約束と礼節、その本質を見失わぬこと。それが人とのつながりを正しく導く。

目次

原文

有子曰、信 於義、言可復也、恭 於禮、 恥辱也、因不失其親、亦可宗也、

信(しん)は義(ぎ)に近(ちか)ければ、言(こと)うこと復(ふく)すべきなり。

恭(きょう)は礼(れい)に近ければ、恥辱(ちじょく)に遠(とお)ざかるなり。

因(よ)りて其(そ)の親(しん)を失(うしな)わざれば、亦(また)宗(そう)とすべきなり

現代語訳(逐語/一文ずつ訳):

  1. 「信は義に近ければ、言うこと復すべきなり」
     → 信(誠実さ)が義(正しさ)に近ければ、その人の言葉は繰り返し信頼してもよい。
  2. 「恭は礼に近ければ、恥辱に遠ざかるなり」
     → 恭(慎み深さ)が礼に則っていれば、恥や辱めから遠ざかるものである。
  3. 「因りて其の親を失わざれば、亦宗とすべきなり」
     → 人とのつながりを大切にし、信頼関係を損なわない者は、模範となる存在とすべきである。

※注:

  • 信(しん):誠実さ、言行一致。
  • 義(ぎ):道理・正義にかなうこと。
  • 復す(ふくす):繰り返して使う、再び信用する。
  • 恭(きょう):つつしみ深さ、礼儀を重んじる態度。
  • 礼(れい):社会秩序を守る作法・形式と、その精神。
  • 恥辱(ちじょく):恥をかくこと、名誉を損なうこと。
  • 因る(よる):よりどころとする、依拠する。
  • 親(しん):親密な関係、信頼関係。
  • 宗(そう)とす:中心・模範・リーダーとする。

全体の現代語訳(まとめ):

誠実さが道理にかなっていれば、その人の言葉は繰り返し信頼してよい。慎み深さが礼節に則っていれば、恥や辱めを避けることができる。そして、信頼関係を損なうことなく保てる人物は、模範として尊ぶに値する。


解釈と現代的意義:

この章句は、信頼・礼儀・人間関係の持続性に関する孔子の価値観を凝縮しています。

  1. 信とは単なる誠実ではなく、“正義に裏打ちされた誠実さ”であるべき
     → 自己都合ではない言葉だからこそ、人から再び信じられる。
  2. 礼とは型だけでなく“中身ある謙虚さ”であってこそ、恥を防ぐ
     → 真の礼儀は、自分を抑え、相手を尊重する心にある。
  3. 人との関係を保ち続けられることが“人格”の証
     → 信頼を失わない人は、組織や社会の中で“核”となる。

ビジネスにおける解釈と適用:

  1. 「信は義に近ければ、言うこと復すべきなり」=“道理ある誠実さ”が信頼を生む
    • 自分の都合ではなく、チームや顧客の立場に立って発せられた言葉は、何度でも信用される。
    • 一貫性のある言動が「この人の言葉なら大丈夫」と思わせる力になる。
  2. 「恭は礼に近ければ、恥辱に遠ざかるなり」=形式を超えた本物の礼儀がリスクを防ぐ
    • 外見や言葉だけでなく、内面から出る「丁寧さ・慎重さ」が、社内外での失言や不和を防ぐ。
    • 上下関係においても、尊重と節度が信頼を築く。
  3. 「因りて其の親を失わざれば、亦宗とすべきなり」=関係を壊さず続けられる人こそリーダー
    • 信頼関係を維持し続ける力は、真の人望や組織の中核を築く資質。
    • 信頼の蓄積がその人を「組織文化の象徴」や「リーダーの候補」に押し上げる。

「信頼は正義から生まれ、謙虚さが信頼を守る──人望は“壊さぬ人”に宿る」

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