父が生きている間は、その志や価値観をよく観察し、理解し、支えるよう努めることが大切である。
父が亡くなった後には、その生前の行いを深く見つめ直し、受け継ぎ、育てていく姿勢が求められる。
とくに、父の死後三年間は、そのやり方を変えずに守るべきとされている。それこそが、真の「孝」である。
目次
原文
子曰、父在觀其志、父沒觀其行、三年無改於父之 、可謂孝矣、
「父(ちち)在(いま)せば其(そ)の志(こころざし)を観(み)、父没(ぼっ)すれば其の行(おこな)いを観る。三年(さんねん)父の道(みち)を改(あらた)むる無(な)きを、孝(こう)と謂(い)うべきなり」
単なる形式ではなく、故人の生き方を尊重し、自分の行動を通じて敬意を示すこと。それが孝の真意である。
現代語訳(逐語/一文ずつ訳):
- 「父在せば其の志を観る」
→ 父が生きている間は、子がどんな志を抱いているかを見て判断する。 - 「父没すれば其の行いを観る」
→ 父が亡くなった後には、子の実際の行動を見て判断する。 - 「三年、父の道を改むる無きを、孝と謂うべきなり」
→ 父の死後3年間、その教えや方針を変えずに守ることを、真の孝行と言える。
※注:
- 父在(ちちいま)せば:父親が生きている状態。
- 志(こころざし)を観る:考え方や志向、心の在り方を評価する。
- 父没(ぼっ)すれば:父が亡くなったあとの状態。
- 行いを観る:実際の行動・ふるまいを評価する。
- 三年(さんねん):喪に服す期間。儒教では親の死後三年間は服喪期間とされた。
- 道(みち)を改むる:父の教えや方針を変える。
- 孝(こう):親に対する孝行・敬意・忠誠心のこと。
全体の現代語訳(まとめ):
父が生きている間は子どもの志を見て孝行の姿勢を判断し、父が亡くなった後はその行動によって判断される。父の教えや方針を三年間変えずに守ることができれば、それは真の孝行と言える。
解釈と現代的意義:
この一節は、「真の孝行は、親が亡くなった後にこそ試される」という深い人間理解に基づいています。
- 生きている間の親孝行はもちろん大事だが、親の価値観や精神を受け継ぎ、実践し続ける姿勢こそ本質。
- 親を単なる存在としてではなく、“生きた教え”として尊重する態度が、「孝の完成形」である。
現代においては、「家業の継承」や「企業理念の維持」など、前任者の理念や信念を大切にする姿勢としても通じます。
ビジネスにおける解釈と適用:
- 「父在せば其の志を観る」=上司や経営者の在任中には“姿勢”が問われる
- 指導を受けている間は、部下や後継者の「志」や「吸収する姿勢」が評価される。
- 言われたことをするだけでなく、「どう成長しようとしているか」が大切。
- 「父没すれば其の行いを観る」=リーダーが去った後に“真価”が問われる
- 先代社長や指導者が引退・退任した後、組織がどう動くかで継承の質が見える。
- 一人ひとりが主体的に動き出せるか、形骸化しないかが試される。
- 「三年、道を改むる無きを孝という」=理念・方針の即時変更を避ける慎重さ
- 組織の「DNA(価値観・哲学)」を守る時期が必要。改革や変化は悪ではないが、すぐに否定しない慎みが信頼を生む。
- 「まずは守る」「理解してから変える」という姿勢が、リーダーシップの成熟を示す。
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