人が亡くなったときには、礼を尽くして見送り、丁重に葬る。
そして、故人や先祖を思い、感謝と敬意をもって供養を続けていくこと。そうした心が人々の間に根づけば、やがて社会全体に厚みある徳が育まれていく。
過去を忘れず、命のつながりを大切にする風潮は、世の中を穏やかで豊かなものにする。
故きを敬う心が、人の道を深くし、社会の在り方を正してゆく。
この言葉は、まさに「文化の持続性と品格」に関する名言であり、短期的成果主義の風潮が強まる現代にこそ、再評価されるべき教えです。
目次
原文
曾子曰、愼 、民德歸厚矣、
「終(お)わりを慎(つつし)み、遠(とお)きを追(お)えば、民(たみ)の徳(とく)、厚(あつ)きに帰(き)す」
現代語訳(逐語/一文ずつ訳):
- 「終わりを慎み」
→ 亡くなった人を丁重に弔い(終焉を大切にし)、 - 「遠きを追えば」
→ ご先祖を敬い、その遺徳を偲ぶならば、 - 「民の徳、厚きに帰す」
→ 民衆の道徳心は自然と厚く(深く)なっていく。
※注:
- 終(おわり):人の死、特に親や上の人の死(葬儀や弔い)を指す。
- 慎む(つつしむ):丁重に行う、慎重で真心のある態度を取る。
- 遠き(とおき)を追う:遠い祖先や過去の先人を敬い、その徳を追慕すること。
- 徳(とく):人としての道徳的な性質、品格。
- 厚きに帰す:深く、篤(あつ)くなる。社会全体の道徳意識が厚くなる。
全体の現代語訳(まとめ):
死者を丁重に弔い、先祖を敬いその徳をしのぶことができれば、人々の道徳心は自然と深まり、社会全体に厚みのある徳が育まれていく。
解釈と現代的意義:
この一節は、「死者や過去への敬意が、生者の徳を養う」という、非常に深い人間理解を表しています。孔子は、表面的な知識よりも、人の営みを支える“敬意”や“つながり”の精神を重視していました。
- 目に見えないものへの敬意(祖先・歴史・文化)を大切にすることが、社会の品格を育む。
- 「今」だけに集中するのではなく、「過去からの流れ」に感謝と尊重を持つことで、人は謙虚になり、道徳心が深まる。
ビジネスにおける解釈と適用:
- 「終わりを慎む」=別れや区切りを丁寧に扱う姿勢
- 退職者・契約終了・プロジェクトの完了など、「終わり」の扱い方が企業の品格を示す。
- 円満なクロージング、感謝を込めたやり取りが次の信頼につながる。
- 「遠きを追う」=過去の功績・創業精神・理念を尊ぶ
- 企業理念、創業者の想い、伝統的なやり方を知り、それを尊重する姿勢は組織文化を強化する。
- 過去を知ることで、今の判断軸に深みが出る。
- 「民の徳、厚きに帰す」=組織の文化が自然と育つ
- 礼儀・感謝・謙虚さといった徳目が、上層部の姿勢によって社内全体に浸透する。
- 経営者やリーダーが「敬意ある終わり方」「過去への感謝」を体現すれば、組織全体の徳が厚くなる。
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