人は平生、己の主義主張を胸に抱き、それに従って歩むべきである。
しかし、現実の中で事に臨み、予想せぬ局面に出逢ったとき、その信念が揺らぎ、考えを変えねばならぬ状況が訪れることもある。
そのような時こそ、慌てて決断に走るべきではなく、再三再四、心を静めて熟慮せねばならぬ。
軽率に方針を曲げることなく、かといって盲目的に固執することなく、慎重にして柔軟なる姿勢をもって、
深く思い、よく考える中に、自ずから心眼が開け、真に己が本心に立ち帰る道が見出される。
このような自省と熟考の習慣を怠ることこそ、意志を鍛える上で最も忌むべき大敵である。
考え抜いた上で行動する者には、決して迷いは残らない。思慮深き態度こそ、信念を磨く道である。
○もし平生自己の主義主張としていたことが、事に当たって変化せねばならぬようなことがあるならば、宜しく再三再四熟慮するが宜い。事を急激に決せず、慎重の態度をもって、よく思い深く考えるならば、自ずから心眼の開くものもありて、遂に自己本心の住家に立ち帰ることができる。この自省熟考を怠るのは、意志の鍛錬にとって、最も大敵であることを忘れてはならぬ。
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