人は本能的に「自分」を守ろうとする。
そのはたらきは、インド哲学において「アハンカーラ(自我意識)」と呼ばれる。
自分の感情、自分の考え、自分の立場、自分の価値観――「自分の(が)」という意識が心を満たし始めると、やがて心の中に余白がなくなる。
アハンカーラは放っておけば成長する。
一つの「自分の」が、次の「自分の」を呼び、やがて心の景色は「私」で塗りつぶされる。
その結果として、「マナス(感情)」のはたらきが始まる。
人は、自分に喜びをもたらすものを求め、苦しみをもたらすものを避けようとする。
これが、「カーマ(欲)」や「モーハ(執着)」を生み出す。
欲と執着が強まるほど、人は現実を歪め、自分の内側に閉じこもる。
外の声を聞かず、他者の痛みを感じず、あらゆることを「自分を守るため」に解釈するようになる。
そしてその狭い世界が、自らをさらに苦しめる循環をつくり出す。
真の自由は、「自分の(が)」を手放すことから始まる。
心に余白が生まれたとき、はじめて他者が見え、世界が広がる。
自己への執着を知り、観察し、それを超えてゆく力を持て。
コメント