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逆境を識りて、正しく応じよ

世の中に逆境がまったく無いとは言い切れない。

しかし、逆境に出会ったとき、ただ嘆くのではなく、その原因を深く探ることが肝要である。

それが人為的なものか、自然の成り行きによるものかを、まず見極めねばならぬ。

自然的な逆境――たとえば天災や運命のめぐりに遭ったときは、天命に安んじて焦らず、心を乱さず、着実に力を蓄えること。撓まず、屈せず、ひたすら勉強を重ねる者にこそ、次の好機は訪れる。

一方で、人為的な逆境――自らの行いや判断の過ちによって招いた困難においては、まず己を省みよ。他を責める前に、自身の非を認め、改むる勇気を持つこと。

逆境は、ただ避けるものではない。それは己を磨き、道を正す試練でもある。

正しく向き合い、静かに乗り越える者だけが、真の力を得る。

世の中に逆境は絶対に無いと言い切ることはできない……宜しくそのよって来る所以を講究し、それが人為的逆境であるか、ただしは自然的逆境であるかを区別し、しかる後これに応ずるの策を立てねばならぬ。

……自然的の逆境に処するに当たっては、まず天命に安んじ、おもむろに来るべき運命を待ちつつ、撓まず屈せず勉強するがよい。

それに反して、人為的の逆境に陥った場合は如何にすべきかというに、これは多く自働的なれば、何でも自分に省みて悪い点を改めるより外はない。

論語と算盤

世の中は、本来なれば平穏無事に進むべきもの。

雨風少なく、道はならされ、人心も安んじておればこそ、人も業も、穏やかにその花を咲かせることができる。

されど、世界は水と同じ

平らかに見えても、深き底より波は立つ。

空に雲なけれど、風は突如として起こる。

国家もまた然り。

静けさの中に、かならず変動の因を孕み、時として「革命」や「変乱」という名の風が吹き荒れる。

それは異常ではない。

それもまた、この世の自然の一部である。

しかも、人は望むと望まざるとにかかわらず、そうした変乱の渦中に生を得ることがある。

逃れがたく、そのただ中に巻き込まれる者もいる。そうした者こそ、真の逆境に立つ者である。

逆境とは、ただ苦しい環境のことを言うのではない。

心ならずも、大いなる流れに立ち向かわねばならぬ者の境涯こそ、逆境というにふさわしい。

このとき、人の真価が問われる。風に振り回されるか、波に沈むか、あるいは、風を見定めて帆を張り、波のうねりに逆らわず、なお進む術を得るか。

世は波打つものと知れ。

常に順風を待つのではなく、変乱のときにこそ、静かなる胆と広き眼をもって臨むこと。

それが、人としての強さであり、動乱の中にあっても「不動」の軸を保つ術である。

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