1. 定率法の特徴
- 定率法では、期首帳簿価額(取得原価 – 減価償却累計額)に一定の償却率を掛けて減価償却費を計算します。
- この方法では、帳簿価額がゼロにならず、残価が残り続けるという特性があります。
2. 改定償却率と償却保証額
(1) 償却保証額
- 償却保証額は、減価償却の下限を定めるための額であり、次のように計算します:
[
\text{償却保証額} = \text{取得原価} \times \text{保証率}
] - 例: 取得原価が3,000円で保証率が0.108の場合:
[
\text{償却保証額} = 3,000 \times 0.108 = 324 \, \text{円}
]
(2) 改定償却率
- 通常の償却率で計算した減価償却費が償却保証額を下回った場合、改定償却率を使用して帳簿価額がゼロになるよう調整します。
- 改定償却率の計算:
[
\text{改定償却率} = \frac{1}{\text{残存耐用年数}}
] - 例: 残存耐用年数が2年の場合:
[
\text{改定償却率} = \frac{1}{2} = 0.500
]
3. 具体例
条件
- 取得原価: 3,000円
- 減価償却累計額: 2,352円(期首の帳簿価額は 648円)
- 耐用年数: 5年
- 償却率: 0.4(200%定率法)
- 保証率: 0.108
- 改定償却率: 0.500
ステップ
- 通常の償却計算
[
\text{減価償却費} = \text{期首帳簿価額} \times \text{償却率}
]
[
\text{減価償却費} = 648 \times 0.4 = 259.2 \, \text{円} \, (\approx 259 \, \text{円})
] - 償却保証額の計算
[
\text{償却保証額} = \text{取得原価} \times \text{保証率}
]
[
\text{償却保証額} = 3,000 \times 0.108 = 324 \, \text{円}
] - 判定
- 通常の減価償却費(259円) < 償却保証額(324円)。この場合、改定償却率に切り替えます。
- 改定償却率での償却
[
\text{減価償却費} = \text{期首帳簿価額} \times \text{改定償却率}
]
[
\text{減価償却費} = 648 \times 0.500 = 324 \, \text{円}
]
4. 仕訳例
- 通常の定率法適用時(償却保証額を下回らない場合)
借方: 減価償却費 259円
貸方: 減価償却累計額 259円
- 改定償却率適用時
借方: 減価償却費 324円
貸方: 減価償却累計額 324円
5. 重要なポイント
- 切り替えタイミング:
- 通常の償却率で計算した減価償却費が償却保証額を下回った時。
- 改定償却率の適用:
- 改定償却率を使用し、耐用年数終了時に帳簿価額がゼロとなるよう調整。
- 記帳方法:
- 記帳方法は間接法(減価償却費と減価償却累計額の勘定を使用)。
まとめ
定率法では、帳簿価額がゼロにならない性質があるため、一定条件を満たすと償却保証額や改定償却率を用いることで適切に調整を行います。これにより、固定資産が耐用年数終了時に正確に償却される仕組みが維持されます。
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