1. 製造間接費配賦差異の決算処理
概要
- 製造間接費の予定配賦と実際発生額との差異(製造間接費配賦差異)は、決算時に売上原価に振り替えます。
- 振り替えの方法:
- 借方残高(不利差異): 売上原価の増加として借方に計上。
- 貸方残高(有利差異): 売上原価の減少として貸方に計上。
仕訳例
- 借方残高(不利差異)を振り替える場合
- 製造間接費配賦差異勘定(200円の借方残高)を売上原価に振り替える:
借方: 売上原価 200円
貸方: 製造間接費配賦差異 200円
- 貸方残高(有利差異)を振り替える場合
- 製造間接費配賦差異勘定(100円の貸方残高)を売上原価に振り替える:
借方: 製造間接費配賦差異 100円
貸方: 売上原価 100円
2. 製造業の財務諸表
製造業の財務諸表は、商品売買業と基本的には同じですが、製造業特有の項目が含まれる点で異なります。
(1) 損益計算書の形式
製造業では以下の点が異なります:
- 売上原価の構成:
製造業では「売上原価」を構成する項目が以下のように分解されます: - 期首仕掛品棚卸高
- 当期製造費用
- 期末仕掛品棚卸高
- 期首製品棚卸高
- 期末製品棚卸高
例:
売上高 10,000円
売上原価:
期首製品棚卸高 1,000円
当期製造原価 6,000円
期末製品棚卸高 (1,500円)
売上原価合計 5,500円
売上総利益 4,500円
(2) 貸借対照表の形式
製造業では以下の項目が追加されます:
- 仕掛品: 製造途中の未完成品を「資産」として計上。
- 製品: 完成品を「資産」として計上。
例:
流動資産:
現金及び預金 2,000円
売掛金 3,000円
仕掛品 1,200円
製品 2,500円
材料 800円
固定資産 10,000円
資産合計 19,500円
3. 製造原価報告書
製造業特有の財務報告として「製造原価報告書」があります。試験では工業簿記で出題されるため、ここでは詳細を省きますが、主に以下の項目が記載されます:
- 直接材料費
- 直接労務費
- 製造間接費
- 当期製造原価
製造原価報告書は損益計算書の「売上原価」計算の一部として利用されます。
4. 商品売買業との違い
項目 | 商品売買業 | 製造業 |
---|---|---|
売上原価 | 仕入原価を計上 | 当期製造原価を基に計算 |
在庫の区分 | 商品 | 材料、仕掛品、製品 |
追加の報告書 | 必要なし | 製造原価報告書が必要 |
損益計算書の内訳 | シンプル | 製造原価や期末在庫調整が含まれる |
まとめ
製造業の会計では、原価差異や製造過程の在庫(材料、仕掛品、製品)を正確に把握し、損益計算書や貸借対照表に反映することが求められます。特に、製造間接費配賦差異の処理や製造原価の計算が製造業の特徴であり、これを理解することが重要です。
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