未実現利益の消去は、ダウンストリーム(親会社→子会社の取引)とアップストリーム(子会社→親会社の取引)で処理が異なります。以下に、各ケースの修正仕訳を具体例を用いて説明します。
1. 期末商品に含まれる未実現利益の消去
(1) ダウンストリーム
- 例4: P社がS社に原価の20%の利益を加算して販売。
- 期末棚卸高: 480円
- 未実現利益の計算:
未実現利益 = 480円 × 20% = 96円
修正仕訳
借方: 売上原価 96円
貸方: 商品 96円
(2) アップストリーム
- 例5: S社がP社に原価の20%の利益を加算して販売。
- 期末棚卸高: 480円
- 未実現利益の計算:
未実現利益 = 480円 × 20% = 96円 - 非支配株主持分の負担:
非支配株主持分 = 96円 × 40% = 38.4円
修正仕訳
借方: 売上原価 96円
貸方: 商品 96円
借方: 非支配株主に帰属する当期純損益 38円
貸方: 非支配株主持分当期変動額 38円
2. 非償却性固定資産の未実現利益の消去
(1) ダウンストリーム
- 例6: P社がS社に土地(帳簿価額700円)を850円で売却。
- 未実現利益の計算:
未実現利益 = 850円 – 700円 = 150円
修正仕訳
借方: 固定資産売却益 150円
貸方: 土地 150円
(2) アップストリーム
- 例7: S社がP社に土地(帳簿価額700円)を850円で売却。
- 未実現利益の計算:
未実現利益 = 850円 – 700円 = 150円 - 非支配株主持分の負担:
非支配株主持分 = 150円 × 40% = 60円
修正仕訳
借方: 固定資産売却益 150円
貸方: 土地 150円
借方: 非支配株主に帰属する当期純損益 60円
貸方: 非支配株主持分当期変動額 60円
3. ポイント
ダウンストリーム
- 親会社が未実現利益を計上している場合、全額消去します。
- 非支配株主持分の調整は不要。
アップストリーム
- 子会社が未実現利益を計上している場合、親会社持分以外の部分(非支配株主持分)を非支配株主に負担させる必要があります。
4. 注意点
- 未実現利益の計算方法:
- 利益率が「原価基準」なのか「売上基準」なのかを問題文で確認。
- 非支配株主持分の計算:
- 非支配株主持分割合(= 1 – 親会社持分割合)を正確に適用。
- 連結修正仕訳の目的:
- 未実現利益を消去して、グループ全体の実態を正確に反映した連結財務諸表を作成する。
このような修正仕訳を連結財務諸表作成時に適切に行うことで、企業グループ全体の正確な財務状況と業績を報告できます。
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