支配獲得日とは、親会社が子会社の意思決定を支配する権利を取得した日を指します。この日に行う連結処理のポイントは、親会社の投資(子会社株式)と子会社の資本(純資産)を相殺消去することです。
1. 支配獲得日の連結手順
(1) 投資と資本の相殺消去
- 親会社が保有する子会社株式の投資額と、子会社の純資産(資本金、利益剰余金など)を相殺。
- 完全所有(100%所有)の場合は、純資産全額を相殺。
仕訳例(100%所有の場合)
P社がS社株式を400円で取得した場合:
借方: 子会社資本(資本金) 300円
借方: 子会社資本(利益剰余金) 100円
貸方: 投資勘定(S社株式) 400円
(2) 非支配株主持分の処理(部分所有の場合)
- 親会社が子会社の一部株式(例えば60%)を所有している場合、残りの株式(40%)は非支配株主に帰属。
- 子会社の純資産のうち、非支配株主の持分を「非支配株主持分(純資産)」として計上。
仕訳例(60%所有の場合)
P社がS社株式を260円で取得し、S社の純資産が400円の場合(資本金300円、利益剰余金100円):
借方: 子会社資本(資本金) 300円 × 60% = 180円
借方: 子会社資本(利益剰余金) 100円 × 60% = 60円
貸方: 投資勘定(S社株式) 260円
貸方: 非支配株主持分 (300円 + 100円) × 40% = 160円
(3) 投資消去差額の処理
- 投資消去差額は、親会社の投資額と子会社の純資産(親会社持分)の金額が一致しない場合に発生。
- 借方に差額が発生する場合:「のれん(資産)」として処理。
- 貸方に差額が発生する場合:「負ののれん(特別利益)」として処理。
仕訳例(のれんが発生する場合)
P社がS社株式を260円で取得し、S社純資産の親会社持分(60%)が240円の場合:
借方: 子会社資本(資本金) 180円
借方: 子会社資本(利益剰余金) 60円
借方: のれん 20円
貸方: 投資勘定(S社株式) 260円
2. 支配獲得日の連結貸借対照表の作成
(1) 完全所有(100%所有)の場合
- 親会社の貸借対照表に、子会社の資産・負債を加算。
- 子会社の資本は相殺済みで計上されません。
連結貸借対照表の例(P社がS社株式を400円で100%取得した場合):
項目 | 金額 |
---|---|
資産 | |
現金 | 500円 |
のれん(差額が発生しない場合) | – |
資産合計 | 500円 |
負債 | |
負債 | 300円 |
純資産 | |
資本金 | 200円 |
純資産合計 | 200円 |
(2) 部分所有(60%所有)の場合
- 非支配株主持分を純資産に計上。
連結貸借対照表の例(P社が260円でS社株式を60%取得した場合):
項目 | 金額 |
---|---|
資産 | |
現金 | 500円 |
のれん(差額が発生する場合) | 20円 |
資産合計 | 520円 |
負債 | |
負債 | 300円 |
純資産 | |
資本金 | 200円 |
非支配株主持分 | 160円 |
純資産合計 | 360円 |
3. まとめ
- 投資と資本の相殺消去
- 支配獲得日の基本処理で、親会社の投資と子会社の純資産を相殺。
- 完全所有の場合は全額相殺、部分所有の場合は非支配株主持分を計上。
- のれんの処理
- 投資額と純資産の親会社持分に差額がある場合は「のれん」または「負ののれん」として処理。
- 非支配株主持分
- 部分所有の場合に、非支配株主の持分を純資産として計上。
支配獲得日の連結修正仕訳は、連結財務諸表作成の重要な基礎であり、特に試験では投資消去差額や非支配株主持分の計算方法を正確に理解することが求められます。
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