サービス業は、飲食、宿泊、教育、医療など、形のない商品(役務)を提供する業種です。サービス業の会計処理では、以下の点が特徴的です:
- サービスを提供したタイミングで収益(役務収益)を計上。
- サービス提供にかかる費用を役務原価(費用)として計上。
目次
サービス業の会計処理
1. 代金を前受けしたとき
サービスを提供する前に代金を受け取った場合、その金額は収益として計上せず、「前受金(負債)」または「契約負債(負債)」として処理します。
【例1】模擬試験の受験料を前受け
取引内容
資格学校T社が、来月実施予定の模擬試験の受験料10,000円を現金で受け取った。
仕訳
借方:現金 10,000円
貸方:前受金 10,000円
2. サービス提供前に費用が発生したとき
サービス提供前に発生した費用が、そのサービスに直接関連している場合、「仕掛品(資産)」として処理します。これは、工業簿記の原価計算における未完成品の処理に類似しています。
【例2】模擬試験作成費用の振替
取引内容
模擬試験の作成にかかったスタッフの給料4,000円を、仕掛品勘定に振り替えた。
仕訳
借方:仕掛品 4,000円
貸方:給料 4,000円
3. サービスを提供したとき
(1) 役務収益の計上と対応する費用の振替
サービス提供時には、前受金を収益(役務収益)として振り替え、対応する費用を仕掛品から役務原価(費用)に振り替えます。
【例3】模擬試験の提供
取引内容
- 受験料10,000円は前受金で処理済み。
- 作成費用4,000円は仕掛品で処理済み。
- 本日、模擬試験を実施した。
仕訳
借方:前受金 10,000円
貸方:役務収益 10,000円
借方:役務原価 4,000円
貸方:仕掛品 4,000円
(2) 継続的なサービスの収益認識
継続的にサービスを提供する場合、提供済み部分の収益を計上し、対応する費用を振り替えます。
【例4】講座の継続提供
取引内容
- 受講料20,000円を現金で受領(全額前受金として処理)。
- 教材作成費10,000円を現金で支払い、仕掛品として処理済み。
- 決算時、講座の40%が終了。
仕訳
- 提供済み部分の収益を計上
借方:前受金 8,000円 (20,000円 × 40%)
貸方:役務収益 8,000円
- 提供済み部分の費用を計上
借方:役務原価 4,000円 (10,000円 × 40%)
貸方:仕掛品 4,000円
4. 仕掛品を経由しないケース
費用の発生と収益の発生がほぼ同時の場合は、仕掛品を経由せず、費用を直接役務原価として処理します。
【例5】ツアーの催行
取引内容
- 旅行代金10,000円を現金で受領。
- ツアー催行時に交通費4,000円を現金で支払った。
仕訳
- 代金受領
借方:現金 10,000円
貸方:役務収益 10,000円
- 費用支払い
借方:役務原価 4,000円
貸方:現金 4,000円
まとめ
サービス業の処理のポイント
- 収益認識
サービスを提供したタイミングで役務収益を計上。 - 前受金の管理
サービス提供前に受領した代金は前受金(負債)として計上。 - 仕掛品の活用
サービス提供前に発生した直接費用は仕掛品(資産)に計上し、提供時に役務原価(費用)に振り替える。 - 仕掛品を経由しない処理
費用と収益の発生が同時の場合は、仕掛品を使用せずに処理。
これらの処理を適切に行うことで、サービス業における収益と費用を正確に計上し、財務諸表の透明性を高めることができます。
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