有価証券を購入したとき
有価証券を購入する際は、保有目的に応じた勘定科目(例:売買目的有価証券、満期保有目的債券、子会社株式など)で処理します。取得原価には、有価証券の価額(購入代価)と付随費用(売買手数料)を含めます。
【購入時の計算方法】
株式の場合
1株あたりの購入単価(株価)に購入株数を掛けた金額に、購入手数料を加算します。
公社債の場合
1回あたりの購入単価に購入回数を掛けた金額に、購入手数料を加算します。
【例1】売買目的有価証券を購入
取引内容
- A社株式10株を1株あたり100円で購入し、購入手数料100円を加算。
- 支払いは3営業日後。
仕訳
借方:売買目的有価証券 1,100円
貸方:未払金 1,100円
【例2】満期保有目的債券を購入
取引内容
- B社社債(額面総額1,000円)を額面100円につき96円で購入。
- 購入手数料30円を加算。
- 支払いは普通預金口座から。
計算
購入金額 = 1,000円 × 96円 ÷ 100 = 960円
取得原価 = 960円 + 30円 = 990円
仕訳
借方:満期保有目的債券 990円
貸方:普通預金 990円
【例3】子会社株式を購入
取引内容
- C社株式80株を1株あたり50円で購入。
- 購入手数料100円を加算。
- 支払いは普通預金口座から。C社は子会社に該当。
計算
購入金額 = 80株 × 50円 = 4,000円
取得原価 = 4,000円 + 100円 = 4,100円
仕訳
借方:子会社株式 4,100円
貸方:普通預金 4,100円
【例4】その他有価証券を購入
取引内容
- D社株式10株を1株あたり200円で購入。
- 購入手数料100円を加算。
- 支払いは3営業日後。
計算
購入金額 = 10株 × 200円 = 2,000円
取得原価 = 2,000円 + 100円 = 2,100円
仕訳
借方:その他有価証券 2,100円
貸方:未払金 2,100円
有価証券を売却したとき
売却時には、有価証券の帳簿価額を資産勘定から減少させます。売却価額と帳簿価額との差額は「有価証券売却益(収益)」または「有価証券売却損(費用)」で処理します。
【例5】売却益の場合
取引内容
- 売買目的で保有するX社株式10株(帳簿価額2,000円)を1株あたり230円で売却。
- 売却代金は現金で受領。
計算
売却価額 = 10株 × 230円 = 2,300円
帳簿価額 = 2,000円
売却益 = 2,300円 – 2,000円 = 300円
仕訳
借方:現金 2,300円
貸方:売買目的有価証券 2,000円
有価証券売却益 300円
【例6】売却損の場合
取引内容
- 売買目的で保有するY社社債(帳簿価額970円)を額面100円につき95円で売却。
- 売却代金は現金で受領。
計算
売却価額 = 1,000円 × 95円 ÷ 100 = 950円
帳簿価額 = 970円
売却損 = 970円 – 950円 = 20円
仕訳
借方:現金 950円
有価証券売却損 20円
貸方:売買目的有価証券 970円
【例7】平均原価法での売却
取引内容
- Z社株式200株(1株あたり500円で100株、520円で100株購入)。
- 150株を1株あたり525円で売却。
- 売却代金は月末に受領。
計算
平均原価 = (500円 × 100株 + 520円 × 100株) ÷ 200株 = 510円
帳簿価額 = 150株 × 510円 = 76,500円
売却価額 = 150株 × 525円 = 78,750円
売却益 = 78,750円 – 76,500円 = 2,250円
仕訳
借方:未収入金 78,750円
貸方:売買目的有価証券 76,500円
有価証券売却益 2,250円
有価証券の購入と売却処理のポイント
- 取得原価の計算
購入代価に手数料を加算することを忘れない。 - 売却時の差額計算
売却価額と帳簿価額との差額を正確に計算し、益または損を仕訳する。 - 平均原価法の適用
同一銘柄を複数回にわたり購入した場合は、平均原価を用いる。
これらの正確な処理が、企業の財務諸表の透明性と信頼性を確保します。
コメント