以下に、固定費調整についての詳細と公式を示します。
固定費調整とは
直接原価計算による営業利益を、外部に公表するために必要な全部原価計算の営業利益に修正する手続きです。
差異の原因
- 直接原価計算: 固定製造原価はすべて当期の費用として処理します。
- 全部原価計算: 固定製造原価は在庫(仕掛品や製品)にも配分されるため、費用計上額が異なります。
調整項目
直接原価計算の営業利益に、在庫(期末仕掛品、期末製品)に含まれる固定製造原価の増減を加減することで調整します。
固定費調整公式
全部原価計算の営業利益=直接原価計算の営業利益+在庫固定費の増減\text{全部原価計算の営業利益} = \text{直接原価計算の営業利益} + \text{在庫固定費の増減}
在庫固定費の増減
在庫固定費の増減=期末在庫に含まれる固定製造原価−期首在庫に含まれる固定製造原価\text{在庫固定費の増減} = \text{期末在庫に含まれる固定製造原価} – \text{期首在庫に含まれる固定製造原価}
直接原価計算の損益計算書(末尾)
損益計算書の最下部に固定費調整項目を追加することで、全部原価計算の営業利益を表示します。
例: 固定費調整の適用
- 直接原価計算の営業利益: 200円
- 期末在庫に含まれる固定製造原価: 800円
- 期首在庫に含まれる固定製造原価: 400円
在庫固定費の増減=800−400=400 円\text{在庫固定費の増減} = 800 – 400 = 400 \, \text{円} 全部原価計算の営業利益=200+400=600 円\text{全部原価計算の営業利益} = 200 + 400 = 600 \, \text{円}
ポイント
- 在庫が増加した場合(期末在庫 > 期首在庫):
- 在庫固定費の増加分が費用として計上されないため、直接原価計算の営業利益にプラス調整。
- 在庫が減少した場合(期末在庫 < 期首在庫):
- 在庫固定費の減少分が費用として計上されるため、直接原価計算の営業利益にマイナス調整。
実務的意義
固定費調整を行うことで、直接原価計算の内部分析向けの損益と、外部公表用の財務会計損益を整合させ、会計基準に基づいた適切な営業利益を報告することが可能になります。
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