1. 概要
仕掛品勘定は、製造工程で未完成の製品(仕掛品)の原価を記録する勘定です。標準原価計算において、仕掛品勘定には完成品原価、月初仕掛品原価、および月末仕掛品原価を標準原価で記入します。
一方、**当月製造費用(直接材料費、直接労務費、製造間接費)**の記入方法には以下の2つがあります。
2. 記入方法の種類
① パーシャル・プラン
- 特徴:
- 当月製造費用を実際原価で記入。
- 仕掛品勘定で原価差異を把握。
- 処理の流れ:
- 実際原価が直接的に仕掛品勘定に記録される。
- 仕掛品勘定の貸借差額が原価差異となる。
② シングル・プラン
- 特徴:
- 当月製造費用を標準原価で記入。
- 原価差異を各原価要素(直接材料費差異、直接労務費差異、製造間接費差異)ごとの勘定で記録。
- 処理の流れ:
- 仕掛品勘定には標準原価のみを記入。
- 差異勘定で実際原価と標準原価の差を把握。
3. 記入例
資料
- 当月投入量: 1,000個
- 標準原価(1個あたり):
- 直接材料費: 500円
- 直接労務費: 600円
- 製造間接費: 900円
- 合計: 2,000円
- 実際原価(当月製造費用):
- 直接材料費: 520,000円
- 直接労務費: 580,000円
- 製造間接費: 920,000円
① パーシャル・プランによる記入
仕掛品勘定 | 借方(円) | 貸方(円) |
---|---|---|
月初仕掛品原価 | 140,000 | |
当月製造費用(実際原価) | 520,000 + 580,000 + 920,000 = 2,020,000 | |
完成品原価(標準原価) | 1,840,000 | |
月末仕掛品原価(標準原価) | 100,000 | |
差額(原価差異) | 80,000(貸方) |
② シングル・プランによる記入
仕掛品勘定 | 借方(円) | 貸方(円) |
---|---|---|
月初仕掛品原価 | 140,000 | |
当月製造費用(標準原価) | 2,000円 × 1,000個 = 2,000,000 | |
完成品原価(標準原価) | 1,840,000 | |
月末仕掛品原価(標準原価) | 100,000 |
- 差異の記録方法:
- 直接材料費差異: 520,000−500,000=20,000520,000 – 500,000 = 20,000(不利差異)
- 直接労務費差異: 580,000−600,000=−20,000580,000 – 600,000 = -20,000(有利差異)
- 製造間接費差異: 920,000−900,000=20,000920,000 – 900,000 = 20,000(不利差異)
4. メリットとデメリット
プラン | メリット | デメリット |
---|---|---|
パーシャル・プラン | 原価差異を一元管理できるため簡便。 | 原価要素別の差異分析が難しい。 |
シングル・プラン | 原価要素別に差異を把握できるため、詳細な分析が可能。 | 仕掛品勘定と差異勘定の両方を管理する必要があるため複雑。 |
5. 選択基準
- 簡便さを重視: パーシャル・プラン。
- 詳細な差異分析を重視: シングル・プラン。
どちらの方法も目的に応じて適切に使い分けることが重要です。
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