製造業を営む会社が作成する財務諸表には、商業簿記と同様に損益計算書および貸借対照表が含まれます。さらに、製造業特有の財務諸表として製造原価報告書が追加されます。
1. 製造原価報告書
概要
- 製造原価報告書は、製造原価の計算結果をまとめた財務諸表です。
- 主に仕掛品勘定の動きを詳細に記載し、製品の原価計算の過程を明確にします。
目的
- 製品製造にかかった直接費(材料費、労務費、経費)と間接費を集計。
- 当期の製造原価を算出。
- 製品原価の正確な把握とコスト管理を目的とします。
2. 製造原価報告書の構造
製造原価報告書は、次のような構造で記載されます。
(1) 当期製造原価の計算
当期製造原価=直接材料費+直接労務費+直接経費+製造間接費\text{当期製造原価} = \text{直接材料費} + \text{直接労務費} + \text{直接経費} + \text{製造間接費}
(2) 総製造費用
総製造費用=当期製造原価+月初仕掛品原価\text{総製造費用} = \text{当期製造原価} + \text{月初仕掛品原価}
(3) 当期完成品原価
当期完成品原価=総製造費用−月末仕掛品原価\text{当期完成品原価} = \text{総製造費用} – \text{月末仕掛品原価}
3. 製造原価報告書の例
資料
- 月初仕掛品原価: 100,000円
- 当期製造原価:
- 直接材料費: 300,000円
- 直接労務費: 150,000円
- 直接経費: 50,000円
- 製造間接費: 200,000円
- 月末仕掛品原価: 120,000円
製造原価報告書
項目 | 金額(円) |
---|---|
直接材料費 | 300,000 |
直接労務費 | 150,000 |
直接経費 | 50,000 |
製造間接費 | 200,000 |
当期製造原価 | 700,000 |
月初仕掛品原価 | 100,000 |
総製造費用 | 800,000 |
月末仕掛品原価 | (120,000) |
当期完成品原価 | 680,000 |
4. 製造原価報告書と他の財務諸表の関係
- 損益計算書:
- 製造原価報告書で計算した当期完成品原価が損益計算書の売上原価に計上されます。
- 貸借対照表:
- 製造原価報告書の月末仕掛品原価が貸借対照表の仕掛品勘定として表示されます。
5. 製造原価報告書の重要性
- 製造原価報告書は、製品原価の計算過程を具体的に示すため、内部のコスト管理や原価計算の透明性確保に役立ちます。
- 財務諸表として外部に提供される場合、製造業の生産活動を詳細に示す補足資料としての役割を果たします。
製造原価報告書を適切に作成し、損益計算書や貸借対照表と連携させることで、製造業の経営状態や製品原価を正確に把握することができます。
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