仕損と減損の処理は、製品の製造過程で生じた損失(形が残る仕損品や形が消える減損)を正確に計算し、原価に含めるための手法です。以下では、仕損・減損の定義や処理方法、評価額がある場合の対応を説明し、それぞれの例を計算します。
1. 仕損と減損の特徴
項目 | 仕損 | 減損 |
---|---|---|
定義 | 製品の加工失敗により不良品が発生 | 蒸発や粉散により材料が消失 |
形状 | 不良品として形が残る | 消滅し形が残らない |
正常/異常 | 正常: 許容範囲内の損失 | 正常: 許容範囲内の損失 |
処理 | 良品(完成品・仕掛品)の原価に含む | 良品(完成品・仕掛品)の原価に含む |
2. 正常仕損・減損の処理方法
(1) 完成品のみ負担
- 条件: 仕損が月末仕掛品の加工進捗度以降の工程で発生。
- 処理: 仕損品を完成品として計算し、完成品原価に負担。
(2) 完成品と仕掛品の両者負担
- 条件: 仕損が月末仕掛品の加工進捗度以前の工程で発生。
- 処理: 仕損を良品の一部として、完成品と仕掛品に按分。
3. 仕損品に評価額がある場合の処理
(1) 完成品のみ負担
- 仕損品評価額の扱い: 完成品総合原価から控除。
(2) 完成品と仕掛品の両者負担
- 仕損品評価額の扱い: 当月投入直接材料費から控除し、その金額を基に計算。
4. 計算例
資料
- 月初仕掛品原価: 2,000円(直接材料費: 1,500円、加工費: 500円)
- 当月投入原価: 8,000円(直接材料費: 6,000円、加工費: 2,000円)
- 完成品数量: 100個
- 月末仕掛品数量: 25個(加工進捗度: 50%)
- 仕損品数量: 5個(発生点: 加工進捗度100%)
- 仕損品評価額: 30円(主に材料の価値)
(1) 完成品のみ負担(平均法)
- 仕損品を完成品として扱う
- 実際の完成品数量 + 仕損品数量: 完成品数量(仕損品含む)=100+5=105 個\text{完成品数量(仕損品含む)} = 100 + 5 = 105 \, \text{個}
- 総完成品換算量
- 月末仕掛品換算量(加工費): 完成品換算量=105+(25×50%)=105+12.5=117.5 個\text{完成品換算量} = 105 + (25 \times 50\%) = 105 + 12.5 = 117.5 \, \text{個}
- 材料費の単位原価(評価額控除後)
- 材料費: 材料費控除後=6,000−30=5,970 円\text{材料費控除後} = 6,000 – 30 = 5,970 \, \text{円}
- 材料費単位原価: 材料費単位原価=1,500+5,970117.5=7,470117.5=63.57 円/個\text{材料費単位原価} = \frac{1,500 + 5,970}{117.5} = \frac{7,470}{117.5} = 63.57 \, \text{円/個}
- 加工費の単位原価
- 加工費: 加工費単位原価=500+2,000117.5=2,500117.5=21.28 円/個\text{加工費単位原価} = \frac{500 + 2,000}{117.5} = \frac{2,500}{117.5} = 21.28 \, \text{円/個}
- 完成品総合原価 完成品総合原価=(105×63.57)+(105×21.28)=6,674.85+2,234.40=8,909.25 円\text{完成品総合原価} = (105 \times 63.57) + (105 \times 21.28) = 6,674.85 + 2,234.40 = 8,909.25 \, \text{円}
- 完成品単位原価 完成品単位原価=8,909.25100=89.09 円/個\text{完成品単位原価} = \frac{8,909.25}{100} = 89.09 \, \text{円/個}
(2) 両者負担(平均法)
- 仕損品の評価額を控除
- 材料費控除後: 材料費控除後=6,000−30=5,970 円\text{材料費控除後} = 6,000 – 30 = 5,970 \, \text{円}
- 完成品・月末仕掛品への按分
- 完成品換算量(加工費): 100+(25×50%)=100+12.5=112.5 個100 + (25 \times 50\%) = 100 + 12.5 = 112.5 \, \text{個}
- 材料費の単位原価 材料費単位原価=1,500+5,970112.5=7,470112.5=66.4 円/個\text{材料費単位原価} = \frac{1,500 + 5,970}{112.5} = \frac{7,470}{112.5} = 66.4 \, \text{円/個}
- 加工費の単位原価 加工費単位原価=500+2,000112.5=2,500112.5=22.22 円/個\text{加工費単位原価} = \frac{500 + 2,000}{112.5} = \frac{2,500}{112.5} = 22.22 \, \text{円/個}
- 月末仕掛品原価
- 材料費: 月末仕掛品原価(材料費)=25×66.4=1,660 円\text{月末仕掛品原価(材料費)} = 25 \times 66.4 = 1,660 \, \text{円}
- 加工費: 月末仕掛品原価(加工費)=12.5×22.22=277.75 円\text{月末仕掛品原価(加工費)} = 12.5 \times 22.22 = 277.75 \, \text{円}
- 合計: 月末仕掛品原価=1,660+277.75=1,937.75 円\text{月末仕掛品原価} = 1,660 + 277.75 = 1,937.75 \, \text{円}
5. まとめ
項目 | 完成品のみ負担 | 両者負担 |
---|---|---|
月末仕掛品原価 | – | 1,937.75円 |
完成品総合原価 | 8,909.25円 | – |
完成品単位原価 | 89.09円/個 | 88.62円/個 |
適切な処理を行うことで、仕損・減損が製品原価に与える影響を正確に反映できます。
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