製造部門費を予定配賦することで、実際発生額を待たずに原価計算を迅速化し、同一の製造条件であれば配賦額が一定となるため、原価の一貫性を保つことができます。
目次
1. 予定配賦額の計算手順
(1) 部門別予定配賦率の計算
(2) 各製造指図書の配賦額の計算
2. 例題
資料
- 第1製造部門:
- 年間製造部門費予算額: 198,000円
- 基準操業度: 1,200時間
- 第2製造部門:
- 年間製造部門費予算額: 144,000円
- 基準操業度: 800時間
- 配賦基準: 直接作業時間
- 製造指図書No1: 第1製造部門 20時間、第2製造部門 15時間
- 製造指図書No2: 第1製造部門 30時間、第2製造部門 25時間
(1) 部門別予定配賦率の計算
- 第1製造部門:
予定配賦率 = 198,000 ÷ 1,200 = 165 円/時間
- 第2製造部門:
予定配賦率 = 144,000 ÷ 800 = 180 円/時間
(2) 各製造指図書の配賦額の計算
- 製造指図書No1:
- 第1製造部門 = 165 × 20 = 3,300 円
- 第2製造部門 = 180 × 15 = 2,700 円
- 合計 = 3,300 + 2,700 = 6,000 円
- 製造指図書No2:
- 第1製造部門 = 165 × 30 = 4,950 円
- 第2製造部門 = 180 × 25 = 4,500 円
- 合計 = 4,950 + 4,500 = 9,450 円
3. 月末の処理
資料
- 第1製造部門:
- 予定配賦額: 16,500円
- 実際発生額: 17,000円
- 差異 = 17,000 – 16,500 = 500 円 (不利差異)
- 第2製造部門:
- 予定配賦額: 12,000円
- 実際発生額: 11,800円
- 差異 = 12,000 – 11,800 = 200 円 (有利差異)
仕訳
- 第1製造部門(不利差異):
借方: 製造部門費配賦差異 500円
貸方: 製造部門費 500円
- 第2製造部門(有利差異):
借方: 製造部門費 200円
貸方: 製造部門費配賦差異 200円
4. 会計年度末の処理
年度末には、製造部門費配賦差異勘定の残高を売上原価勘定に振り替えます。
- 借方残高(不利差異):
借方: 売上原価 500円 貸方: 製造部門費配賦差異 500円
- 貸方残高(有利差異):
借方: 製造部門費配賦差異 200円 貸方: 売上原価 200円
5. ポイント
- 予定配賦のメリット:
- 原価計算の迅速化。
- 原価の一貫性を確保。
- 月末処理:
- 差異が発生するため、月末や年度末に調整を行う必要がある。
- 差異の判定:
- 不利差異(借方差異): 実際発生額が予定配賦額を上回る。
- 有利差異(貸方差異): 実際発生額が予定配賦額を下回る。
まとめ
製造部門費の予定配賦により、効率的な原価計算が可能となり、コスト管理の精度が向上します。
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