目次
貸倒れとは
貸倒れとは、取引先の倒産や財務状況の悪化などにより、売掛金や受取手形が回収できなくなることをいいます。
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1. 当期に発生した売掛金や受取手形が貸し倒れた場合
当期に発生したものが貸し倒れた場合、全額を 貸倒損失[費用] として処理します。
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仕訳例
- 取引: 得意先が倒産し、売掛金100円(当期に発生)が貸し倒れた。
借方: 貸倒損失 100 貸方: 売掛金 100
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
貸倒損失 | 100 | 売掛金 | 100 |
2. 貸倒引当金とは
貸倒引当金は、将来の貸倒損失に備え、決算時に見積もった金額を設定するための勘定科目です。売掛金や受取手形の期末残高に対して、一定の割合で見積もります。
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3. 貸倒引当金の設定
新規設定時
貸倒引当金を新規で設定する場合、見積もり金額を以下のように仕訳します。
仕訳例
- 取引: 売掛金1,000円の2%を貸倒引当金として設定。
借方: 貸倒引当金繰入 20 貸方: 貸倒引当金 20
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
貸倒引当金繰入 | 100 | 貸倒引当金 | 20 |
既存の貸倒引当金がある場合
既存の貸倒引当金が残っている場合、設定額と既存額の差額のみを調整します。
仕訳例
- 取引: 売掛金1,500円の2%を貸倒引当金として設定。既存の貸倒引当金は20円。
- 必要額: 1,500円 × 2% = 30円調整額: 30円 – 20円 = 10円
借方: 貸倒引当金繰入 10 貸方: 貸倒引当金 10
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
貸倒引当金繰入 | 10 | 貸倒引当金 | 10 |
過剰の場合
既存の貸倒引当金が設定額を超える場合、超過分を戻入れます。
仕訳例
- 取引: 必要額が18円、既存額が20円。
借方: 貸倒引当金 2 貸方: 貸倒引当金戻入 2
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 2 | 貸倒引当金戻入 | 2 |
4. 前期以前の売掛金が貸し倒れた場合
貸倒引当金が設定されている場合、その金額を取り崩して処理します。超過分は 貸倒損失 として計上します。
仕訳例
- 取引: 売掛金100円(前期に発生)が貸し倒れ。貸倒引当金の残高は30円。
借方: 貸倒引当金 30 貸倒損失 70 貸方: 売掛金 100
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 30 | 売掛金 | 100 |
貸倒損失 | 70 |
5. 貸倒処理済みの売掛金や受取手形を回収した場合
回収額は 償却債権取立益[収益] として処理します。
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仕訳例
- 取引: 前期に貸倒処理した売掛金100円を現金で回収。
借方: 現金 100 貸方: 償却債権取立益 100
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 100 | 償却債権取立益 | 100 |
まとめ
- 当期に発生した貸倒れ → 全額を貸倒損失として処理。
- 貸倒引当金の設定:
- 新規 → 全額を設定。
- 既存 → 差額を調整。
- 過剰 → 超過分を戻入れ。
- 前期以前の貸倒れ → 設定額を取り崩し、超過分を貸倒損失に計上。
- 貸倒済みの回収 → 償却債権取立益として処理。
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