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ファイナンス・リース取引とは?概要から会計処理、特徴、注意点まで解説

ファイナンス・リース取引(Finance Lease Transaction)は、リース契約の一種で、リース資産の使用権を実質的に移転する取引を指します。これは通常、リース期間中に資産の取得コストや利息相当分を支払う契約形態であり、経済的には資産の購入と同様の扱いとなります。


1. ファイナンス・リース取引の定義

会計基準における定義

ファイナンス・リース取引は、日本基準や国際会計基準(IFRS)で、以下の条件を満たすリース契約として定義されます:

  • 所有権移転型リース:リース期間終了後にリース資産の所有権が借手に移転する契約。
  • 所有権移転外リース:所有権は移転しないが、リース期間終了時点で資産価値の大部分が借手に帰属する契約。

特徴

  1. 長期契約:リース期間が資産の耐用年数に近い場合が多い。
  2. 経済的購入:リース期間中に資産の全コストが支払われるため、実質的に購入に近い。
  3. 解約不可:リース契約は通常、リース期間中の解約ができない。

2. ファイナンス・リース取引の特徴

(1) 借手の視点

  • 資産を購入するのと同様の経済的効果を持つ。
  • 資産や負債を貸借対照表に計上し、減価償却やリース負債の償還を行います。

(2) 貸手の視点

  • リース資産は売却と同様に扱われ、貸付金として会計処理されます。
  • 受取利息収益を計上する形で収益認識が行われます。

(3) 契約条件

  • リース期間が資産の耐用年数の大部分に相当。
  • リース料総額が資産の公正価値に近い。

3. 会計処理の概要

(1) 借手の会計処理

借手は、ファイナンス・リース取引を資産の取得として処理します。

貸借対照表
  • リース資産を「使用権資産」として計上。
  • リース負債を「リース負債」として計上。
損益計算書
  • 減価償却費(リース資産)を計上。
  • リース負債に対する利息費用を計上。
初期認識の仕訳例

リース資産:1,000,000円
リース負債:1,000,000円

借方:使用権資産 1,000,000円  
貸方:リース負債 1,000,000円
リース料支払い時の仕訳

リース料:200,000円(内訳:利息50,000円、元本返済150,000円)

借方:リース負債     150,000円  
借方:支払利息      50,000円  
貸方:現金       200,000円

(2) 貸手の会計処理

貸手は、リース契約を貸付金として扱い、受取利息収益を計上します。

初期認識の仕訳例

リース料総額:1,200,000円(元本1,000,000円、利息200,000円)

借方:リース債権 1,200,000円  
貸方:リース資産 1,000,000円  
貸方:未実現収益 200,000円
リース料受取時の仕訳

リース料:200,000円(内訳:元本返済150,000円、利息50,000円)

借方:現金     200,000円  
貸方:リース債権  200,000円  

借方:未実現収益  50,000円  
貸方:リース収益  50,000円

4. ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違い

項目ファイナンス・リースオペレーティング・リース
資産の計上借手の貸借対照表に計上貸手の貸借対照表に計上
リース期間資産の耐用年数に近い短期間(資産の一部使用)
所有権の移転ある場合もある基本的に移転しない
会計処理の複雑さ複雑(減価償却・負債計上)簡単(リース料を費用として処理)

5. ファイナンス・リースのメリットとデメリット

メリット

  1. 資金調達が容易
  • 購入資金がなくても資産を使用可能。
  1. コスト配分の柔軟性
  • 資産使用期間に応じて費用を計上。
  1. 所有権リスクの軽減
  • 資産価値の変動リスクを回避可能。

デメリット

  1. 貸借対照表の膨張
  • 資産と負債が計上されるため、財務比率が悪化する場合がある。
  1. 解約不可
  • 契約期間中の解約が制約される。
  1. 金利負担
  • 実質的に利息が加算されるため、総コストが高くなる場合がある。

6. ファイナンス・リースの注意点

(1) 契約内容の確認

  • リース期間、解約条件、リース料の総額を十分に確認。

(2) 会計基準の遵守

  • 日本基準(企業会計基準第13号)やIFRS第16号に従った処理が必要。

(3) 財務諸表への影響

  • ファイナンス・リースにより、貸借対照表の資産と負債が増加するため、財務比率に影響を与える可能性があります。

(4) 税務対応

  • リース料のうち利息部分が損金算入されるため、税務処理での区分が必要。

まとめ

ファイナンス・リース取引は、資産を所有せずに長期的に使用できる経済的購入のような仕組みです。会計処理は複雑ですが、使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上することで、資産活用の透明性が向上します。

取引の適切な処理や契約条件の確認には、税理士や会計士などの専門家の助言を活用することをおすすめします。

ファイナンス・リース取引の処理


利子込み法の処理


条件
  • リース契約日: X1年7月1日
  • リース期間: 5年
  • 見積現金購入価額: 8,800円
  • 年間リース料: 2,000円(毎年6月30日に後払い)
  • 減価償却: 残存価額0円、耐用年数をリース期間とする定額法
  • 記帳方法: 間接法

仕訳

(1) X1年7月1日(リース契約日)

  • リース資産をリース料総額(2,000円 × 5年 = 10,000円)で計上。
  • リース債務を同額計上。
借方: リース資産       10,000円  
貸方: リース債務       10,000円  

(2) X2年3月31日(決算日)

  • リース資産の減価償却費を計上。
    減価償却費 = 10,000円 ÷ 5年 × 9/12(9か月分) = 1,500円。
借方: 減価償却費       1,500円  
貸方: 減価償却累計額   1,500円  

(3) X2年4月1日(翌期首)

  • 再振替仕訳が必要な場合、決算日に未払計上した利息の逆仕訳を行いますが、この場合はなし。

(4) X2年6月30日(リース料支払日)

  • リース料2,000円を支払ったときの処理。
    リース債務を減少させる。
借方: リース債務       2,000円  
貸方: 現金             2,000円  

利子抜き法の処理


条件
  • リース契約日: X1年7月1日
  • リース期間: 5年
  • 見積現金購入価額: 8,800円
  • 年間リース料: 2,000円(毎年6月30日に後払い)
  • 減価償却: 残存価額0円、耐用年数をリース期間とする定額法
  • 記帳方法: 間接法

仕訳

(1) X1年7月1日(リース契約日)

  • リース資産を見積現金購入価額(8,800円)で計上。
  • リース債務を同額計上。
借方: リース資産       8,800円  
貸方: リース債務       8,800円  

(2) X2年3月31日(決算日)

  • 減価償却費の計上
    減価償却費 = 8,800円 ÷ 5年 × 9/12 = 1,320円。
借方: 減価償却費       1,320円  
貸方: 減価償却累計額   1,320円  
  • 利息の計上
    支払利息 = (リース債務残高 ÷ リース期間) × 利率。
    利率は問題文で明記されないため、試験では計算式に従って処理。

(3) X2年4月1日(翌期首)

  • 再振替仕訳を行う場合。
借方: 支払利息       ○○円  
貸方: 未払利息       ○○円  

(4) X2年6月30日(リース料支払日)

  • リース料支払い時の処理(利息と元本に分けて計上)。
借方: リース債務       1,760円  
借方: 支払利息         240円  
貸方: 現金             2,000円  
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