総平均法は、棚卸資産の評価方法の一つで、購入時期や価格が異なる複数の在庫を合計し、その総額を総数量で割った平均単価を算出し、棚卸資産や売上原価を評価する方法です。主に、在庫の価格が頻繁に変動する場合に利用され、コストの一貫性を保つ効果があります。
総平均法とは?
総平均法では、以下のようなステップで棚卸資産を評価します:
- 総額と総数量の計算
- 仕入れたすべての商品の購入総額と総数量を集計。
- 平均単価の算出
- 総額を総数量で割り、平均単価を計算。
- 在庫と売上原価の評価
- 平均単価を基に、期末棚卸資産や売上原価を計算。
総平均法の計算方法
計算式
[
\text{平均単価} = \frac{\text{購入総額(期首棚卸資産を含む)}}{\text{購入総数量(期首棚卸数量を含む)}}
]
総平均法の特徴
- 価格変動の平準化
- 平均単価を使用することで、仕入価格の変動が損益計算に与える影響を平準化。
- 計算のシンプルさ
- 仕入れの合計を一度に計算するため、他の評価方法に比べて手間が少ない。
- 比較的広く適用可能
- 小売業や製造業など、さまざまな業種で利用可能。
総平均法の計算例
例題
以下の条件で、期末棚卸資産と売上原価を計算します。
- 期首棚卸資産:数量10個、単価100円、合計1,000円
- 仕入1:数量20個、単価120円、合計2,400円
- 仕入2:数量30個、単価110円、合計3,300円
- 売上数量:40個
計算手順
- 購入総額と総数量を計算
[
\text{総額} = 1,000円 + 2,400円 + 3,300円 = 6,700円
]
[
\text{総数量} = 10個 + 20個 + 30個 = 60個
] - 平均単価を算出
[
\text{平均単価} = \frac{6,700円}{60個} = 111.67円(小数点以下切り捨て)
] - 売上原価を計算
[
\text{売上原価} = 40個 \times 111.67円 = 4,466.8円
] - 期末棚卸資産を計算
[
\text{期末在庫数量} = 60個 – 40個 = 20個
]
[
\text{期末棚卸資産} = 20個 \times 111.67円 = 2,233.4円
]
総平均法の仕訳例
例題の続き
期中に売上が発生した場合の仕訳は以下の通りです:
- 売上高を計上(売上価格200円/個、40個販売)
現金 8,000円 / 売上高 8,000円
- 売上原価を計上
売上原価 4,467円 / 商品 4,467円
総平均法のメリットとデメリット
メリット
- 価格変動の平準化
- 仕入価格の変動が平均化され、損益が安定。
- 計算が簡単
- 各仕入の単価や数量を集計するだけで平均単価を算出可能。
- 一般的な適用性
- 業種や規模を問わず広く利用可能。
デメリット
- 適時性に欠ける
- 平均単価を基にするため、実際の在庫価格を反映しにくい。
- 手間がかかる場合も
- 商品の種類が多い場合や頻繁な仕入れがある場合、計算が複雑化。
- 価格変動の影響を完全には排除できない
- 極端な価格変動があると、平均単価でも影響を受ける。
総平均法の活用例
例:小売業における商品管理
- 食品を扱うスーパーマーケットでは、毎日の仕入れや販売が多岐にわたる。
- 総平均法を利用して平均単価を算出し、在庫評価と売上原価の計算を簡略化。
- 業務効率を上げつつ、価格変動の影響を平準化。
総平均法と他の評価方法の比較
評価方法 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
総平均法 | 平均単価で評価 | 小売業、製造業など |
個別法 | 実際の購入価格で評価 | 高額商品(車、宝石) |
移動平均法 | 平均単価を逐次計算 | 在庫変動が激しい場合 |
先入先出法 | 古い価格から順に消費として計上 | 消耗品、食品など |
後入先出法 | 新しい価格から順に消費として計上 | 建設資材など |
まとめ
総平均法は、平均単価を用いて棚卸資産や売上原価を計算する方法で、仕入価格の変動を平準化し、損益を安定させる効果があります。特に在庫管理が多岐にわたる業種で効果的に利用されます。
実務では、価格変動の頻度や在庫種類の多さに応じて適切な評価方法を選択し、財務諸表に正確に反映することが重要です。総平均法を活用することで、業務効率の向上と財務報告の透明性を高めることが可能です。
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