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企業残高基準法とは?概要と仕訳のポイントを解説

企業残高基準法は、企業会計の実務や簿記で用いられる方法の一つで、特に税効果会計の基準として重要な概念です。この方法は、企業の財務諸表における「資産・負債」の残高を基準として、一時差異を把握し、税効果会計を適用する際に用いられます。

この記事では、企業残高基準法の基本的な考え方、適用される場面、仕訳の例について詳しく解説します。


企業残高基準法とは?

企業残高基準法(Balance Sheet Approach)は、貸借対照表(B/S)の残高を基に、将来的に課税対象となる差異(=一時差異)を特定し、繰延税金資産や繰延税金負債を計上する手法です。

基本的な考え方

企業残高基準法では、次のようなプロセスを経て税効果会計を行います:

  1. 貸借対照表上の資産・負債を確認
  • 財務諸表の残高を基に、一時差異を特定。
  1. 一時差異を分類
  • 課税一時差異:将来、課税所得を増加させる差異。
  • 控除一時差異:将来、課税所得を減少させる差異。
  1. 税効果を計算
  • 一時差異に税率を掛け合わせ、繰延税金資産または繰延税金負債を計上。

一時差異とは?

一時差異とは、会計上の利益と税務上の課税所得の間に、将来解消される差異を指します。一時差異は、会計基準と税法の違いによって生じます。

例:

  • 減価償却の方法が会計と税務で異なる場合。
  • 貸倒引当金や退職給付引当金などの計上タイミングが異なる場合。

一時差異の種類

  1. 課税一時差異
  • 例:減価償却費が税務上の方が早く認められる場合。
  • 将来的に課税所得を増加させる差異。
  1. 控除一時差異
  • 例:貸倒引当金が会計上では認められるが、税務上では認められない場合。
  • 将来的に課税所得を減少させる差異。

企業残高基準法の適用場面

企業残高基準法は、特に以下のような場面で適用されます:

  1. 税効果会計
  • 財務諸表上に繰延税金資産や繰延税金負債を計上する際。
  1. 一時差異の発生時
  • 会計上の利益と課税所得が一致しない場合に、その差異を認識。
  1. 決算整理仕訳
  • 決算時に、税効果会計を反映させるための調整。

簿記における企業残高基準法の仕訳

以下に具体例を示します。

例題:

  1. 前提条件
  • 貸倒引当金:会計上50,000円、税務上30,000円。
  • 差額の20,000円が控除一時差異として計上される。
  • 税率:30%。
  1. 計算
  • 差額:20,000円 × 30% = 6,000円
  • この6,000円を「繰延税金資産」として計上。
  1. 仕訳
   繰延税金資産 6,000円 / 法人税等調整額 6,000円

企業残高基準法のメリットとデメリット

メリット

  1. 精度の高い将来予測
    資産・負債の残高を基にするため、将来の税金影響を正確に反映できます。
  2. 国際的な基準への適合
    IFRS(国際財務報告基準)や米国会計基準(US GAAP)に対応。

デメリット

  1. 計算の煩雑さ
    資産・負債ごとに一時差異を把握し、計算する必要があります。
  2. 将来予測の不確実性
    税率変更や経済状況の変化により、計上内容が変動する可能性があります。

まとめ

企業残高基準法は、貸借対照表の残高を基準に税効果会計を行う方法で、特に国際的な会計基準において採用される重要な手法です。一時差異を正確に認識し、繰延税金資産や負債を適切に計上することで、企業の財務状況をより正確に反映できます。

簿記2級や1級を目指す方にとっては、この概念を理解し、仕訳を正確に行えることが重要です。

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