簿記の学習や実務で「為替差損(かわせさそん)」という言葉を目にすることがあると思います。これは、特に国際的な取引を扱う企業において重要な概念であり、決算書や帳簿に大きな影響を与えることもあります。
この記事では、為替差損の基本から、その計算方法、仕訳例までを詳しく解説します。
為替差損とは?
為替差損とは、外国通貨を使った取引において、為替レートの変動により発生する損失を指します。具体的には、取引時のレートと決済時のレートに差がある場合、その差額が損失として計上されることがあります。
例:
- ある日本企業が米ドルで商品を購入したとします。
- 取引時の為替レートは 1ドル = 110円 でした。
- しかし、決済時には為替レートが 1ドル = 115円 に上昇していた場合、1ドルあたり5円分の損失が発生します。
この差額を「為替差損」と呼びます。
為替差損が発生する場面
為替差損は、以下のような場面で発生することが一般的です:
- 外貨建て取引
- 外国通貨を使用して商品を購入したり、サービスを受けたりする場合。
- 外貨預金や借入金
- 外貨で資金を運用している場合や、外貨で借り入れを行っている場合。
- 決算時の外貨換算
- 企業が決算時に外貨建ての資産や負債を円換算する際。
為替差損の計算方法
為替差損は、取引時の為替レートと決済時の為替レートの差を基に計算されます。
計算式:
[
\text{為替差損(または為替差益)} = (\text{決済時レート} – \text{取引時レート}) \times \text{取引金額(外貨ベース)}
]
簿記における為替差損の仕訳
為替差損が発生した場合、以下のように仕訳を行います。
例題:
- 米ドルで商品を購入(仕入)し、代金を後日支払う場合。
- 商品購入時:1ドル = 110円
- 決済時:1ドル = 115円
- 取引金額:1,000ドル
仕訳例:
- 商品購入時(仕入時)
仕入 110,000円 / 買掛金 110,000円
- 決済時(為替差損発生時)
- 決済額:1,000ドル × 115円 = 115,000円
- 差損額:115,000円 – 110,000円 = 5,000円
買掛金 110,000円 / 普通預金 115,000円
為替差損 5,000円
為替差損と為替差益の違い
為替差損は「損失」ですが、逆に為替レートが有利に変動した場合には「為替差益(かわせさえき)」として計上されます。仕訳方法は基本的に同じですが、差額が利益として計上される点が異なります。
まとめ
為替差損は、外貨建ての取引を行う際に避けられないリスクの一つです。為替レートの変動が企業の収益に与える影響は大きく、特に国際取引を行う企業にとっては重要な管理項目となります。
簿記を学習する際は、為替差損や差益の概念を理解し、正確な仕訳ができるようになることが大切です。
次回は、為替差損を回避するための「為替ヘッジ」について解説します!
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