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全部原価計算とは?その概要と特徴を解説

全部原価計算は、製品の製造にかかるすべての費用(固定費・変動費の両方)を製品原価として計上する原価計算の手法です。この方法では、直接費や製造間接費をすべて製品原価に含めるため、製品原価の全体像を把握できる特徴があります。


全部原価計算の概要

定義

全部原価計算(Absorption Costing)は、製品の製造に直接関連する費用だけでなく、間接費(固定費や変動費)もすべて製品原価として計上する方法です。

特徴

  • すべての費用を原価に含める
    製造原価(直接材料費、直接労務費、製造間接費)をすべて製品原価に配賦します。
  • 固定費と変動費を区別しない
    固定費も変動費も製品原価として扱う。

全部原価計算の構成要素

全部原価計算では、以下の費用を製品原価として計算します。

1. 直接費

  • 直接材料費:製品の製造に直接使用される材料費。
  • 直接労務費:製品の製造に直接携わる作業員の給与。

2. 製造間接費

  • 変動費:生産量に比例して増減する費用(例:電気代、消耗品費)。
  • 固定費:生産量に関わらず一定の費用(例:工場の賃借料、減価償却費)。

全部原価計算の計算方法

基本式

[
\text{製品原価} = \text{直接材料費} + \text{直接労務費} + \text{製造間接費(変動費 + 固定費)}
]


計算例

データ

  • 直接材料費:500,000円
  • 直接労務費:300,000円
  • 製造間接費(変動費):200,000円
  • 製造間接費(固定費):400,000円
  • 生産量:1,000個

ステップ1:製品原価の計算
[
\text{製品原価} = \text{直接材料費} + \text{直接労務費} + \text{製造間接費}
]
[
\text{製品原価} = 500,000 + 300,000 + (200,000 + 400,000) = 1,400,000 \, \text{円}
]

ステップ2:1個あたりの製品原価
[
\text{1個あたりの製品原価} = \frac{\text{製品原価}}{\text{生産量}}
]
[
\text{1個あたりの製品原価} = \frac{1,400,000}{1,000} = 1,400 \, \text{円}
]


全部原価計算のメリット

1. 総合的なコスト把握

  • 製品製造にかかるすべての費用を計上するため、原価の全体像が把握できる。

2. 財務報告に適している

  • GAAP(一般に認められた会計原則)では、製品原価に固定費を含めることが求められるため、財務報告に適合。

3. 利益計算が容易

  • 売上高から製品原価を引くだけで利益を計算できる。

4. 長期的なコスト管理に有用

  • 固定費を含むため、長期的なコスト分析に適している。

全部原価計算のデメリット

1. 固定費の影響が大きい

  • 生産量が変動すると、1個あたりの原価が大きく変化する。

2. 変動費との区別が難しい

  • 固定費と変動費を区別しないため、変動費の影響を分析しにくい。

3. 短期的な意思決定に不向き

  • 固定費を製品原価に含めるため、変動費だけを考慮した短期的な意思決定には向かない。

全部原価計算と直接原価計算の違い

項目全部原価計算直接原価計算
計算対象変動費 + 固定費変動費のみ
固定費の扱い製品原価に含める期間費用として扱う
目的長期的なコスト管理や財務報告短期的な意思決定や変動費の分析
適用場面財務報告、全体的なコスト把握短期的な価格設定や利益分析

全部原価計算の活用事例

1. 製品価格の設定

  • 製造原価に基づいて適切な製品価格を設定。

2. 長期的な収益性の評価

  • 固定費を含むため、製品ラインや事業全体の収益性を長期的に分析。

3. 財務報告

  • 財務諸表における売上原価計算の基礎データとして活用。

全部原価計算を改善する方法

1. 固定費の管理

  • 設備のメンテナンスを最適化し、固定費の削減を図る。

2. データの正確性向上

  • 各原価要素の記録を正確に行い、計算の信頼性を高める。

3. 変動費と固定費の分析

  • 全部原価計算の結果を基に、固定費と変動費を別々に分析。

4. 生産計画の最適化

  • 生産量を適切に計画し、1個あたりの固定費を最小化。

全部原価計算のまとめ

全部原価計算は、製品製造にかかるすべての費用を反映し、製品原価を正確に計算するための重要な手法です。この方法は、長期的なコスト管理や財務報告に適しており、企業の経営判断に役立ちます。

一方で、固定費の影響が大きいため、短期的な意思決定や変動費の分析には直接原価計算と併用することが推奨されます。全体のコスト構造を正確に把握するために、全部原価計算を有効に活用しましょう!

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