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異常減損とは?

異常減損(いじょうげんそん) とは、企業が保有する固定資産の価値が予測外の事由によって著しく減少し、回収可能価額が帳簿価額を大きく下回る場合に発生する損失を指します。
通常の使用や経年劣化による価値の減少(減価償却)とは異なり、突発的で非日常的な要因が原因となるのが特徴です。


異常減損の発生原因

  1. 自然災害
  • 地震、洪水、火災などの災害による物理的損壊。
  1. 経済環境の変化
  • 市場価値の急激な下落や競争激化による価値減少。
  1. 技術革新
  • 新技術の登場により、既存の設備や技術が陳腐化。
  1. 事業環境の変化
  • 工場閉鎖、事業縮小、売上不振による資産の利用価値低下。
  1. 法的・規制的要因
  • 新しい規制や法律の施行により資産の使用が制限される。

異常減損の会計処理

1. 減損損失の計上

異常減損が発生した場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、差額を損失として計上します。

回収可能価額の計算
回収可能価額は以下のいずれか低い金額とされます:

  1. 純売却価額(資産を売却した場合に得られる金額)
  2. 使用価値(将来のキャッシュフローの割引現在価値)

減損損失の計算式
[
減損損失 = 帳簿価額 – 回収可能価額
]


2. 異常減損の仕訳

例:機械設備(帳簿価額2,000,000円)の異常減損が発生し、回収可能価額が1,200,000円に減少した場合。

仕訳:

借方:減損損失 800,000  
貸方:機械設備 800,000

異常減損の判断基準

  1. 資産グループの特定
  • 資産が独立してキャッシュを生み出す単位(資産グループ)を特定します。
  1. 兆候の確認
  • 資産の利用価値や市場価値が著しく低下している兆候がある場合に減損の検討を開始します。
  1. 回収可能価額の測定
  • 回収可能価額を算定し、帳簿価額と比較します。
  1. 減損損失の認識
  • 回収可能価額が帳簿価額を下回る場合に減損損失を認識します。

異常減損と通常減価償却の違い

項目異常減損通常の減価償却
原因自然災害、事業環境の変化、技術革新などの突発的要因時間経過や使用による価値の減少
対象突発的に価値が著しく低下した資産使用や経年に伴い価値が徐々に減少する資産
発生タイミング不定期毎期継続的に計上
会計処理減損損失を損益計算書に計上減価償却費を損益計算書に計上

異常減損の影響

  1. 財務諸表への影響
  • 損益計算書に減損損失として計上され、当期純利益が減少。
  • 貸借対照表では資産の帳簿価額が減少。
  1. 経営への影響
  • 減損損失の発生は経営環境の悪化や資産管理の問題を示す可能性。
  • 投資家や債権者に対する信頼低下のリスク。
  1. 税務への影響
  • 減損損失は会計上費用として認識されるが、税務上の損金算入は規定に従う必要がある。

異常減損を防ぐための対策

  1. 資産の定期的な評価
  • 定期的に資産価値を見直し、早期に兆候を把握。
  1. リスク管理の徹底
  • 災害リスクや事業環境の変化に備えた対策を講じる。
  1. 経営判断の見直し
  • 不採算事業や利用価値の低い資産の早期売却を検討。
  1. 技術革新への対応
  • 技術革新や市場の変化に柔軟に対応し、資産の陳腐化を防ぐ。

異常減損の事例

1. 自然災害による損失

  • 例:工場が洪水で被災し、設備が使用不能になった場合。

2. 技術革新による価値低下

  • 例:新しい生産技術の登場により、旧式の設備が陳腐化した場合。

3. 市場価値の急落

  • 例:土地の市場価値が経済的要因で急激に下落した場合。

異常減損のまとめ

異常減損 は、突発的な事象により資産価値が著しく減少する場合に発生します。
適切な会計処理を行い、損失を正確に計上することで、財務諸表の信頼性を維持できます。また、資産価値の定期的な見直しやリスク管理を徹底することで、異常減損の発生を予防することが重要です。

簿記や経理の実務担当者は、異常減損の兆候や処理手順を理解し、迅速かつ正確に対応するスキルを磨くことが求められます。

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