簿記における「訂正仕訳」とは、過去に記帳した仕訳に誤りがあった場合に、その誤りを訂正するために行う仕訳のことです。
特に企業の経理業務では、正確な帳簿を作成することが重要なため、ミスが発見された場合には速やかに訂正仕訳を行う必要があります。
目次
訂正仕訳の基本ルール
- 誤った仕訳を逆仕訳で取り消します。
- 正しい仕訳を記入します。
- 逆仕訳と正しい仕訳を合算して、最終的な訂正仕訳を作成します。
訂正仕訳の基本的な方法
訂正仕訳には主に2つの方法があります。
1. 取り消し仕訳
誤った仕訳を取り消し、正しい仕訳を新たに記帳する方法です。この方法では、誤った仕訳をそのまま逆仕訳で取り消し、新たな正しい仕訳を行います。
例:
誤った仕訳:
借方:仕入 100,000
貸方:現金 100,000
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
実際には「備品」を購入した場合の正しい仕訳は以下です。
正しい仕訳:
借方:備品 100,000
貸方:現金 100,000
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
備品 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
訂正仕訳:
- 誤った仕訳を逆仕訳:
借方:現金 100,000
貸方:仕入 100,000 - 正しい仕訳を記帳:
借方:備品 100,000
貸方:現金 100,000
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 100,000 | 仕入 | 100,000 |
備品 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
2. 差額訂正仕訳
誤りの差額部分だけを訂正する方法です。この方法は、ミスが単純であり、訂正の影響が限定的な場合に使用されます。
例:
誤った仕訳:
借方:仕入 90,000
貸方:現金 90,000
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 90,000 | 現金 | 90,000 |
実際には「100,000円」の仕入であった場合の訂正仕訳は以下です。
訂正仕訳:
借方:仕入 10,000
貸方:現金 10,000
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 10,000 | 現金 | 10,000 |
問題例
状況
商品100円を仕入れ、代金のうち20円を現金で支払い、残額80円を掛けとした。
誤って次の仕訳を記録していた:
- 借方: 仕入 100円
- 貸方: 現金 100円
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 100 | 現金 | 100 |
正しい仕訳
正しい仕訳は次の通り:
- 借方: 仕入 100円
- 貸方: 現金 20円
- 貸方: 買掛金 80円
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 100 | 現金 | 20 |
買掛金 | 80 |
1. 誤った仕訳の逆仕訳
誤った仕訳を取り消すため、逆仕訳を記入します。
- 借方: 現金 100円
- 貸方: 仕入 100円
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 100 | 仕入 | 100 |
2. 正しい仕訳
正しい仕訳を記入します。
- 借方: 仕入 100円
- 貸方: 現金 20円
- 貸方: 買掛金 80円
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 100 | 現金 | 20 |
買掛金 | 80 |
3. 訂正仕訳の作成
逆仕訳と正しい仕訳を合算して、最終的な訂正仕訳を作成します。
合算
- 借方: 仕入 -100円(逆仕訳) + 100円(正しい仕訳) → 仕入 100円
- 貸方: 現金 +100円(逆仕訳) – 20円(正しい仕訳) → 現金 80円
- 貸方: 買掛金(正しい仕訳のみ) → 買掛金 80円
訂正仕訳
- 借方: 現金 80円
- 貸方: 買掛金 80円
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 80 | 買掛金 | 80 |
訂正仕訳の注意点
- 仕訳の履歴を明確に残す
訂正仕訳を行った場合、元の仕訳を取り消した記録を残しておくことが重要です。これにより、後から帳簿を確認する際に訂正の経緯を追跡できます。 - 税務への影響
訂正仕訳が税務申告に影響する場合、顧問税理士や上司に相談することが推奨されます。 - 訂正内容を報告する
重要な訂正の場合、上司や関係者に内容を説明し、必要に応じて承認を得ることも重要です。
実務での訂正仕訳の活用シーン
- 決算準備時の確認
決算前の帳簿確認で誤りを発見した場合に訂正仕訳を行います。 - 監査や税務調査対応
監査法人や税務調査官からの指摘を受けて訂正仕訳を実施するケースもあります。 - 日常業務でのミス訂正
経理担当者が日々の業務でミスに気づいた際に、訂正仕訳で対応します。
ポイント
- 訂正仕訳は「誤りの取消し(逆仕訳)」と「正しい仕訳の記録」を合算して作成します。
- 問題で示された誤仕訳と正しい仕訳をしっかり確認することが重要です。
まとめ
訂正仕訳を正しく行うことで、帳簿の正確性を保つだけでなく、トラブルを未然に防ぐことができます。簿記を学んでいる方や経理担当者の方は、実践的な訂正仕訳のスキルを身につけておくことをお勧めします!
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