先入先出法(FIFO: First-In, First-Out)とは、在庫管理および原価計算の方法の一つで、先に仕入れた在庫から順に出庫する(または販売する)と仮定して、在庫の評価や売上原価を計算する方法です。この方法では、古い仕入れ単価が最初に使用されるため、在庫が残る場合には最新の仕入れ単価が評価に適用されます。
先入先出法の特徴
- 古い在庫を先に使用
- 先に仕入れた在庫から順に販売または出庫されると仮定。
- 在庫の評価
- 残存在庫は、最新の仕入れ単価で評価される。
- 売上原価の計算
- 先に仕入れた商品の単価を順に使用して売上原価を計算。
- 物理的な流れを反映
- 商品の物理的な流れが先入先出の順序である場合に適している(例:食品、飲料)。
先入先出法の計算例
条件
- 商品Aを以下のように仕入れ:
- 1月1日:10個を100円/個で仕入れ
- 1月5日:15個を120円/個で仕入れ
- 1月10日:20個を130円/個で仕入れ
- 1月15日に25個を販売。
売上原価の計算
販売分(25個)は、先入先出法に基づき古い順から出庫。
- 1月1日の在庫10個を出庫:
10個 × 100円 = 1,000円 - 1月5日の在庫15個を出庫:
15個 × 120円 = 1,800円
合計売上原価:1,000円 + 1,800円 = 2,800円
残存在庫の計算
販売後の残存在庫は、1月10日に仕入れた20個と1月5日の残り(0個)から成る。
- 1月10日の在庫20個:
20個 × 130円 = 2,600円
先入先出法のメリットとデメリット
メリット
- 在庫評価のリアルタイム性
- 残存在庫が最新の仕入れ単価で評価されるため、時価に近い評価が得られる。
- 物理的な流れと一致
- 実際の在庫消費順序が「先入先出」である場合に自然な方法。
- 簡潔な計算
- 記録管理が比較的簡単である。
デメリット
- 売上原価が低くなる可能性
- 物価が上昇している場合、古い安価な仕入れ単価を使用するため、売上原価が低くなり、課税所得が増加する。
- インフレ時の影響
- 物価上昇時に利益が実態以上に膨らむ可能性がある。
- 非現実的な仮定
- 実際の在庫消費順序が「先入先出」でない場合には、現実を反映していない可能性。
先入先出法の仕訳例
条件
- 1月1日:商品10個を100円/個で仕入れ(現金払い)。
- 1月15日:25個を販売(単価200円/個)。
仕入れ時の仕訳
借方:仕入 1,000円
貸方:現金 1,000円
販売時の仕訳(売上)
売上額:25個 × 200円 = 5,000円
借方:現金 5,000円
貸方:売上 5,000円
販売時の仕訳(売上原価)
売上原価(先入先出法で計算済み):2,800円
借方:売上原価 2,800円
貸方:商品 2,800円
先入先出法と他の在庫評価方法との比較
評価方法 | 特徴 | 売上原価 | 残存在庫 |
---|---|---|---|
先入先出法 | 古い在庫を先に出庫。残存在庫は最新の仕入れ単価で評価。 | 比較的低くなる(物価上昇時)。 | 最新仕入単価で評価。 |
後入先出法 | 新しい在庫を先に出庫。残存在庫は古い仕入れ単価で評価。 | 比較的高くなる(物価上昇時)。 | 古い仕入単価で評価。 |
平均法 | 仕入れ単価の平均を用いる。 | 売上原価と残存在庫の変動が少ない。 | 平均単価で評価。 |
先入先出法が適用されるケース
- 食品や飲料などの消費財
- 賞味期限のある商品の在庫管理に適している。
- 在庫量が少ない場合
- 仕入れ単価の記録と管理が容易な場合に適用。
- 物価が安定している状況
- 価格変動が少ない業界での使用が有効。
まとめ
先入先出法は、古い仕入れ在庫から順に出庫するという仮定に基づいて、在庫管理や売上原価を計算する方法です。この方法は、残存在庫を最新の仕入れ単価で評価できるため、在庫の評価が時価に近くなるという利点があります。ただし、インフレ環境下では売上原価が低く計上されることで課税所得が増加する可能性があるため、適用する場面を慎重に検討することが重要です。
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