差額補充法とは、企業が管理する小口現金の残高を一定額に保つために、支出額に応じて不足分(差額)を補充する方法です。この方法では、現金残高が不足した時点や定期的なタイミングで補充を行い、小口現金の上限額(定額)を維持します。
差額補充法の特徴
- 定額制の維持
- 小口現金の上限額をあらかじめ設定し、補充によってその金額を維持します。
- 支出額に応じた補充
- 実際の支出額分を正確に計算し、その差額を補充します。
- 効率的な現金管理
- 必要最小限の現金を保有することで、過剰な現金保有を防ぎます。
- 透明性の確保
- 小口現金出納帳との照合により、支出内容が明確になります。
差額補充法の流れ
- 上限額の設定
- 例:小口現金の上限額を50,000円と設定。
- 支出の記録
- 小口現金を使った支出内容を小口現金出納帳に記録。
- 差額の計算
- 上限額と現金残高を照らし合わせ、不足額を計算。
- 不足分の補充
- 差額を経理部門から補充し、上限額を復元。
差額補充法の記録例
条件
- 小口現金上限額:50,000円
- 支出額:
- 交通費:5,000円
- 郵便代:2,000円
- 消耗品費:3,000円
- 現金残高:40,000円
補充額の計算
補充額 = 上限額 - 現金残高
= 50,000円 - 40,000円
= 10,000円
補充後の記録
日付 | 内容(摘要) | 入金額(円) | 出金額(円) | 残高(円) |
---|---|---|---|---|
2024/12/01 | 小口現金補充 | 10,000 | 50,000 |
差額補充法の仕訳例
1. 小口現金の補充時
例:10,000円を補充
借方:旅費交通費 5,000円
借方:通信費 2,000円
借方:消耗品費 3,000円
貸方:普通預金 10,000円
2. 支出時の記録
例:交通費5,000円を支出
借方:旅費交通費 5,000円
貸方:小口現金 5,000円
差額補充法のメリットとデメリット
メリット
- 現金管理の効率化
- 必要最低限の現金補充で済み、管理が簡単。
- 支出の透明性
- 支出内容を記録することで、不正や記録漏れを防止。
- 過剰保有の防止
- 小口現金の上限額が設定されているため、現金の過剰保有を防げる。
- 経理部門の負担軽減
- 一度にまとめて補充するため、頻繁な現金補充が不要。
デメリット
- 記録の手間
- 支出内容の記録が漏れると補充額に誤差が生じる。
- 定期的な確認が必要
- 現金残高を定期的に確認し、帳簿と照合する手間がかかる。
差額補充法と定額資金前渡法の違い
項目 | 差額補充法 | 定額資金前渡法 |
---|---|---|
補充方法 | 上限額と現金残高の差額を補充する。 | 定期的に一定額を前渡しする。 |
記録タイミング | 支出ごとに記録し、差額補充時に仕訳。 | 前渡し時と支出ごとに記録。 |
現金管理の柔軟性 | 支出額に応じて補充するため、柔軟な運用が可能。 | 固定額を前渡しするため、柔軟性に欠ける場合がある。 |
補充頻度 | 必要に応じて補充(支出額に応じる)。 | 定期的に一定額を補充。 |
適用範囲 | 少額支出が不規則に発生する場合に適している。 | 定期的に一定額の支出が見込まれる場合に適している。 |
差額補充法の運用のポイント
- 正確な記録
- 支出内容を小口現金出納帳に漏れなく記載。
- 領収書の管理
- 支出ごとに領収書を受け取り、記録内容と一致していることを確認。
- 定期的な確認
- 実際の現金残高と帳簿残高を照合し、不一致がないか確認。
- 透明性の確保
- 定期的に経理部門や監査担当者によるチェックを実施。
差額補充法を活用するシーン
- 日常経費の管理
- 小規模な支出が頻繁に発生する企業や部署での運用に最適。
- 予測が難しい支出
- 支出額や発生頻度が一定でない場合に柔軟に対応可能。
- 現金の過剰管理を防ぐ
- 必要な分だけ補充するため、余剰な現金を保有せず、管理コストを抑えられる。
まとめ
差額補充法は、小口現金を効率的に管理するための方法であり、支出額に応じた補充によって現金の過剰保有を防ぎつつ透明性を確保します。正確な記録と定期的なチェックを行うことで、不正や記録ミスを防ぎ、スムーズな現金管理を実現できます。この方法は、特に少額支出が頻繁に発生する場面で有効です。
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