決算とは、企業が一定の会計期間(通常1年)における財務状況や経営成績を明らかにするために、すべての取引をまとめ、財務諸表を作成する一連の会計プロセスを指します。
決算は、企業の経営状況を内外の利害関係者(株主、取引先、金融機関など)に報告するための重要な活動です。
目次
決算とは
決算とは、1会計期間(通常1年)における企業の経営成績(損益)や財政状態(資産・負債・資本)を明らかにするための手続きです。
決算を1年に1回するのは決まっていることです。しかし、そのほかに中間決算、四半期決算、月次決算があります。
決算の種類
年次決算(本決算)
- 企業の会計年度末に実施される決算。
- 財務諸表を作成し、税務申告や外部報告を行います。
中間決算
- 年次決算の中間時点(6か月目など)で実施する決算。
- 業績の途中経過を把握し、経営方針を修正するために行います。
月次決算
- 毎月の業績や財務状況を把握するための内部管理用の決算。
決算日とは
決算日は、会計期間の最後の日で、帳簿の締め日です。
- 株式会社の場合: 一般的に、会計期間は4月1日から翌年3月31日(決算日は3月31日)と設定されていることが多いです。
- 個人商店の場合: 会計期間は1月1日から12月31日で、決算日は12月31日です。
決算の目的
財務状況の把握
- 貸借対照表(B/S)を通じて、資産、負債、純資産の状況を把握します。
経営成績の報告
- 損益計算書(P/L)を通じて、一定期間の収益と費用を基に純利益を計算します。
キャッシュフローの確認
- キャッシュフロー計算書を用いて、現金の流れを明確化します。
法的義務の履行
- 税務申告や配当の決定など、法令に基づいた手続きを行います。
経営計画の見直し
- 決算結果を基に、次期の事業計画や予算編成に役立てます。
決算で作成される財務諸表
貸借対照表(Balance Sheet, B/S)
- 決算日時点での資産、負債、純資産の状況を示します。
- 例:現金、売掛金、借入金、資本金。
損益計算書(Profit and Loss Statement, P/L)
- 一定期間の収益と費用を記録し、純利益を算出します。
- 例:売上高、仕入高、営業利益。
キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)
- 一定期間の現金収支を「営業活動」「投資活動」「財務活動」に分けて表示します。
株主資本等変動計算書
- 一定期間における株主資本の変動を記録します。
注記
- 財務諸表の補足情報を提供します。
決算のプロセス
取引記録の整理
- 仕訳帳や総勘定元帳を基に、すべての取引を正確に記録します。
試算表の作成
- 勘定科目ごとの残高を集計し、試算表を作成して記録の整合性を確認します。各勘定の残高を集計し、試算表を作成します。
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決算整理:修正仕訳の記録
- 決算日の時点で必要な修正を行い、正確な帳簿状態を整えます。減価償却費の計上、引当金の設定、未払費用や前払費用の調整を行います。
財務諸表の作成
- 修正済みの帳簿データを基に、貸借対照表や損益計算書を作成します。正確な帳簿データをもとに、損益計算書や貸借対照表などを作成します。
帳簿の締め切り
決算後の帳簿を締めて、翌期の記録に備えます。
税務申告
- 税額を確定し、法人税や消費税などを申告・納付します。決算内容に基づいて、税務申告書を作成し、税務署に提出します。
決算報告の作成
- 株主総会や経営会議に向けた報告書を作成します。
決算時の会計処理の例
1. 売上計上
例:当期売上100,000円(消費税10%込み)を記録
借方:売掛金 110,000円
貸方:売上 100,000円
貸方:仮受消費税 10,000円
2. 減価償却費の計上
例:固定資産の減価償却費50,000円を計上
借方:減価償却費 50,000円
貸方:減価償却累計額 50,000円
3. 貸倒引当金の設定
例:売掛金の1%を貸倒引当金として計上(売掛金500,000円の場合)
借方:貸倒引当金繰入 5,000円
貸方:貸倒引当金 5,000円
4. 法人税等の計上
例:法人税100,000円を計上
借方:法人税等 100,000円
貸方:未払法人税等 100,000円
決算に伴う税務
法人税の計算
- 利益を基に税額を計算し、確定申告を行います。
消費税の申告
- 売上に対する仮受消費税から仕入に対する仮払消費税を差し引いて納付額を算出します。
住民税と事業税
- 地方税としての申告・納付が必要です。
決算の重要性
経営状況の可視化
- 決算により、収益性や財務健全性を明確に把握できます。
外部報告の基礎
- 銀行融資や投資家への報告に利用されます。
税務遵守
- 正確な決算が適切な税務申告につながります。
内部統制の強化
- 決算プロセスを通じて、不正や記録ミスを防ぐことができます。
決算の注意点
- 正確な記録
- 未収収益や未払費用などを漏れなく記録します。
- 棚卸資産の評価
- 棚卸資産の評価方法(例:先入先出法、低価法)を統一して適用します。
- 税法の遵守
- 最新の税制改正を確認し、法令に則った処理を行います。
- 外部監査対応
- 監査法人や税理士からのチェックに備えて記録を整備します。
次のステップ: 決算整理
決算整理は、決算手続きの中核であり、以下のような調整を行います。
- 決算整理① 現金過不足の処理
- 決算整理② 当座借越勘定への振り替え
- 決算整理③ 貯蔵品勘定への振り替え
- 決算整理④ 貸倒引当金の設定
- 決算整理⑤ 有形固定資産の減価償却
- 決算整理⑥ 有形固定資産の売却
- 決算整理⑦ 売上原価の算定
- 決算整理⑧ 消費税の納付額の計算
- 決算整理⑨ 費用・収益の前払い・前受けと未払い・未収
- 決算整理⑩ 法人税等の計上
次に、決算整理の具体的な内容を説明していきます。
まとめ
決算は、企業の財務状況や経営成績を把握するための重要な手続きであり、正確で適切な記録が求められます。会計処理の基本を遵守し、財務諸表の作成や税務申告を通じて企業の信頼性を高めることが目的です。また、決算結果を基に経営改善や戦略の見直しを行うことで、次期の成長につなげることができます。
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