掛け取引とは、商品やサービスの受け渡し時に即座に現金で支払わず、一定の支払期限を設けて代金を後払いする取引のことです。売り手にとっては「売掛金」、買い手にとっては「買掛金」として帳簿に記録されます。
掛け取引は、信用取引とも呼ばれ、現金取引に比べて取引の流動性を高める一方、信用管理が重要となります。
掛け取引の仕組み
- 商品やサービスの提供
- 売り手が商品やサービスを提供し、買い手は後日支払うことを約束します。
- 支払期限の設定
- 支払条件(例:30日以内、翌月末払いなど)を契約で取り決めます。
- 請求書の発行
- 売り手は、取引後に請求書を発行して、代金支払いを請求します。
- 代金の支払い
- 買い手は、支払期限内に現金や銀行振込で代金を支払います。
掛け取引の会計処理
掛け取引は、売り手と買い手の双方で異なる勘定科目を使用して処理されます。
1. 売り手(売掛金)の仕訳
商品やサービスを掛けで販売した場合、売掛金として資産を計上します。
例:商品を200,000円(消費税10%込み)で掛け販売した場合
借方:売掛金 220,000円
貸方:売上 200,000円
貸方:仮受消費税 20,000円
代金を回収した際の仕訳:
借方:普通預金 220,000円
貸方:売掛金 220,000円
2. 買い手(買掛金)の仕訳
商品やサービスを掛けで仕入れた場合、買掛金として負債を計上します。
例:商品を200,000円(消費税10%込み)で掛け仕入れた場合
借方:仕入 200,000円
借方:仮払消費税 20,000円
貸方:買掛金 220,000円
代金を支払った際の仕訳:
借方:買掛金 220,000円
貸方:普通預金 220,000円
掛け取引のメリットとデメリット
メリット
- 売り手側
- 顧客との取引機会が増加し、売上を拡大できる。
- 顧客に柔軟な支払方法を提供することで信用を得やすい。
- 買い手側
- 資金繰りが楽になり、大きな支出を分散できる。
- 即時支払いが不要なため、キャッシュフローの調整が可能。
デメリット
- 売り手側
- 代金未回収のリスク(貸倒れリスク)が発生。
- 売掛金管理の負担が増える。
- 買い手側
- 支払期限を守らないと信用を損なう。
- 買掛金の残高が増えすぎると資金繰りが悪化する。
掛け取引の管理ポイント
- 信用管理
- 顧客の信用力を事前に評価し、信用リスクを最小限に抑える。
- 新規顧客に対しては、取引限度額を設定する。
- 売掛金・買掛金の管理
- 売掛金元帳や買掛金元帳を使用して取引先ごとの残高を把握する。
- 定期的に未回収金や支払い状況を確認する。
- 支払条件の明確化
- 支払期限や方法を契約書や請求書で明記し、トラブルを防ぐ。
- キャッシュフローの把握
- 掛け取引による資金の流れを計画し、現金不足を防ぐ。
- 貸倒引当金の設定
- 売掛金の一部を貸倒れリスクに備えて引当金として計上する。
掛け取引の例と仕訳まとめ
取引内容 | 売り手の仕訳 | 買い手の仕訳 |
---|---|---|
商品の掛け販売(消費税込み) | 借:売掛金 220,000円 貸:売上 200,000円 貸:仮受消費税 20,000円 | 借:仕入 200,000円 借:仮払消費税 20,000円 貸:買掛金 220,000円 |
掛け代金の回収・支払い | 借:普通預金 220,000円 貸:売掛金 220,000円 | 借:買掛金 220,000円 貸:普通預金 220,000円 |
まとめ
掛け取引は、企業間での信用を基にした取引であり、売上拡大や資金繰りの調整に役立ちます。しかし、貸倒れリスクや管理の複雑さも伴います。適切な信用管理、取引記録、キャッシュフロー管理を行うことで、掛け取引を効果的に活用し、企業の成長に寄与させることが可能です。帳簿管理や会計ソフトを活用し、正確で効率的な管理を心がけましょう。
コメント