受取手形記入帳は、企業が手形取引を管理するために使用する補助簿の一つです。受取手形記入帳は、主に取引先から受け取った手形の記録を体系的に行うためのものであり、手形の発行日や満期日、金額、振出人などの情報を一元管理します。
目次
受取手形記入帳の目的と重要性
手形の詳細管理
- 取引ごとの手形情報(振出人、金額、発行日、満期日など)を把握し、ミスや紛失を防ぎます。
資金繰りの計画
- 手形の満期日を管理することで、資金繰りやキャッシュフローの見通しを立てやすくします。
帳簿の正確性向上
- 手形取引を正確に記録することで、帳簿の整合性と透明性を保ちます。
受取手形記入帳の記入項目
受取手形記入帳には、以下の項目を記載します。
- 日付
- 手形を受け取った日付を記録します。
- 振出人
- 手形を発行した取引先の名前を記入します。
- 受取手形番号
- 手形固有の番号を記録します。手形番号は重要な識別情報です。
- 金額
- 手形の金額を記録します。
- 満期日
- 手形の支払期日を記入します。
- 引受銀行
- 手形の支払いを行う銀行の名前を記録します。
- 備考
- 手形に関する特記事項(手形の裏書譲渡や割引など)を記載します。
記入のポイント
- 日付欄:
- 手形を受け取った日付を記入します(例:7月7日)。
- 手形が減少する場合(例:入金時)は、該当日付を記入します(例:10月7日)。
- 手形種類欄:
- 手形の種類を記入します。例:「約手」(約束手形)。
- 手形番号欄:
- 手形の番号を記入します。
- 摘要欄:
- 手形の発生(相手科目)または減少理由を記入します。例:「売掛金」「入金」など。
- 支払人欄:
- 手形代金を支払う義務のある人を記入します。
- 振出人または裏書人欄:
- 手形を振り出した人(または裏書人)を記入します。
- 振出日・満期日欄:
- 手形の振出日(作成日)および満期日(支払期日)を記入します。
- 支払場所欄:
- 手形代金の支払いが行われる場所(金融機関)を記入します。
- 手形金額欄:
- 手形の金額を記入します。
- 減少時(入金や貸倒れ)は金額を▲(赤字)で記入します(試験では黒の鉛筆で記入)。
受取手形記入帳の記入例
日付 | 振出人 | 手形番号 | 金額 | 満期日 | 引受銀行 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
2024/12/01 | 株式会社A | 12345 | 1,000,000円 | 2025/01/15 | 東京銀行 | 裏書譲渡予定 |
2024/12/05 | 株式会社B | 67890 | 500,000円 | 2025/02/10 | 三井銀行 | 割引予定 |
受取手形記入帳 記入例
日付 | 手形種類 | 手形番号 | 摘要(相手科目) | 支払人 | 振出人または裏書人 | 振出日 | 満期日 | 支払場所 | 手形金額(円) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
7月7日 | 約手 | 12345 | 売掛金 | A商店 | A商店 | 7月7日 | 10月7日 | A商店取引銀行 | 10,000 |
8月5日 | 約手 | 67890 | 売掛金 | B商店 | B商店 | 8月5日 | 11月5日 | B商店取引銀行 | 15,000 |
10月7日 | – | – | 入金(当座預金) | – | – | – | – | – | ▲10,000 |
受取手形記入帳の作成方法
記録タイミング
- 手形を受け取った時点で速やかに記録します。
定期的な確認
- 満期日が近い手形を定期的に確認し、適切な処理(現金化、割引、裏書譲渡など)を行います。
手形の処理方法の記載
- 手形を現金化した場合や、他社へ譲渡した場合は、備考欄に詳細を記入します。
受取手形記入帳の会計処理との関係
受取手形記入帳は、仕訳帳や総勘定元帳と連動します。手形を受け取った際、以下のような仕訳を行います。
例:手形を受け取った時の仕訳
借方:受取手形 1,000,000円
貸方:売上 1,000,000円
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
受取手形 | 1,000,000 | 売上 | 1,000,000 |
例:手形を現金化した時の仕訳
借方:現金 1,000,000円
貸方:受取手形 1,000,000円
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 1,000,000 | 受取手形 | 1,000,000 |
例:手形を割引した場合
借方:現金 990,000円
借方:手形売却損 10,000円
貸方:受取手形 1,000,000円
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 990,000 | 受取手形 | 1,000,000 |
手形売却損 | 10,000 |
あわせて読みたい


簿記の勘定科目:「手形売却損」の基礎知識
「手形売却損」とは、企業が保有する受取手形を期日前に銀行などの金融機関に割り引いて資金化する際に発生する費用を記録するための勘定科目です。この費用は、損益計…
注意点と管理のポイント
手形の保管
- 手形は重要な有価証券です。記入帳だけでなく、実際の手形も厳重に保管します。
満期日管理
- 満期日を過ぎてしまうと手形が不渡りになるリスクがあります。記入帳を基に、スケジュールをしっかり管理しましょう。
記録の正確性
- 手形情報(番号、金額、満期日など)を正確に記録することで、取引先とのトラブルを防ぎます。
まとめ
受取手形記入帳は、手形取引を管理し、正確な会計処理を行うための重要な補助簿です。適切な記録と管理を行うことで、手形の不渡りリスクや処理漏れを防ぐことができます。
定期的に記録内容を確認し、手形に関連する取引の透明性を高めましょう。
コメント