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簿記における移動平均法:在庫評価の基礎知識

移動平均法は、在庫評価や原価計算の方法の一つです。在庫の取得価格が変動する場合、取得するたびに平均単価を計算し直して在庫や売上原価を評価する手法です。

この方法は、仕入れ単価が頻繁に変動する場合に有効で、在庫評価をより現実に即した形で行うことができます。

目次

移動平均法の基本的な仕組み

移動平均法では、新たに在庫を仕入れるたびに在庫の平均単価を再計算します。その平均単価をもとに、次の出庫(販売や使用)の原価を計上します。

計算式

移動平均単価 = (前在庫の金額 + 今回仕入れ金額) ÷ (前在庫数量 + 今回仕入れ数量)

移動平均法の具体例

例1:商品の仕入れと販売

  • 1月1日:商品10個を1,000円(単価100円)で仕入れ。
  • 1月5日:商品5個を800円(単価160円)で仕入れ。
  • 1月10日:商品8個を販売。

手順1:1月5日時点での平均単価の計算

前在庫:10個 × 100円 = 1,000円
今回仕入れ:5個 × 160円 = 800円
合計金額:1,000円 + 800円 = 1,800円
合計数量:10個 + 5個 = 15個
平均単価 = 1,800円 ÷ 15個 = 120円

手順2:1月10日の販売原価の計算

販売数量:8個
販売原価:8個 × 120円 = 960円

手順3:残在庫の計算

残数量:15個 – 8個 = 7個
残在庫:7個 × 120円 = 840円

移動平均法のメリットとデメリット

メリット

在庫単価が実際の仕入れ価格に近い

  • 常に最新の平均単価を用いるため、在庫評価が現実に即します。

計算が簡単

  • 新たな仕入れがあるたびに平均単価を計算するだけでよい。

デメリット

計算頻度が多い

  • 仕入れのたびに平均単価を再計算するため、頻繁に仕入れがある場合は手間がかかります。

管理が煩雑になる可能性

  • 大量の商品や異なる種類の商品を扱う場合、記録や計算が複雑になることがあります。

移動平均法と他の在庫評価法との違い

評価方法特徴
移動平均法仕入れごとに平均単価を再計算。実際の在庫評価に近い。
総平均法期中のすべての仕入れをまとめて平均単価を算出。計算頻度が少なく、簡単だがタイムラグがある。
先入先出法先に仕入れたものから順に払い出すと仮定。在庫が古くなる商品(食品など)に適している。
後入先出法後に仕入れたものから順に払い出すと仮定。物価が変動する場合、利益調整に有効。ただし日本基準では非推奨(税務面で認められない)。

簿記での移動平均法の仕訳例

例2:仕入れと販売の仕訳

  • 1月1日:商品を1,000円で仕入れた場合の仕訳
借方:商品    1,000円  
貸方:現金    1,000円
  • 1月5日:商品を800円で仕入れた場合の仕訳
借方:商品     800円  
貸方:現金     800円
  • 1月10日:8個を販売(平均単価120円)した場合の仕訳
借方:売上原価   960円  
貸方:商品    960円
借方:現金   1,200円(仮に販売価格150円/個)  
貸方:売上   1,200円

まとめ

移動平均法は、在庫管理において現実の取引を反映しやすい評価方法です。

在庫単価が頻繁に変動する場合に適しており、商品の出入りが多い企業にとって実用的です。

ただし、計算頻度が高い点に注意が必要です。

他の評価方法と比較しながら、自社の状況に最適な方法を選びましょう。

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