「専従者給与」とは、個人事業主が家族従業員(青色事業専従者または白色事業専従者)に支払う給与を指します。この給与は、個人事業主が損金(必要経費)として計上できる特別な給与制度であり、適切に記帳・申告することで節税効果を得ることができます。本記事では、専従者給与の概要、会計処理、税務上のルール、注意点について解説します。
専従者給与とは?
専従者給与は、個人事業主が家族従業員に対して支払う給与を指し、以下のように分類されます:
- 青色事業専従者給与
青色申告を行う個人事業主が、家族従業員に支払う給与。 - 白色事業専従者給与
白色申告を行う個人事業主が、家族従業員に支払う給与(控除額には制限あり)。
青色事業専従者給与の特徴
青色事業専従者給与は、次の条件を満たす場合に経費として計上できます:
- 事業専従者であること
専従者が、事業に専ら従事している必要があります(※原則として年間6ヶ月以上)。 - 事前届出が必要
「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出し、届出額の範囲内で支給する必要があります。 - 適正な給与額であること
市場の相場や仕事の内容に対して過大または過少な給与額でないこと。 - 家族従業員の条件
個人事業主と生計を一にしている配偶者、親族、または親等内の親族であること。
白色事業専従者給与の特徴
白色事業専従者給与は、経費としてではなく、事業主控除として以下の控除額が適用されます:
- 配偶者
年間86万円が控除限度額。 - その他の親族
1人あたり50万円が控除限度額。
専従者給与の会計処理
- 給与の支払い時の仕訳
専従者給与は、通常の従業員給与と同様に「給与手当」や「専従者給与」として計上します。 例:専従者に月20万円の給与を支払った場合
借方:専従者給与 200,000円
貸方:普通預金 200,000円
- 源泉所得税の控除
専従者給与にも源泉所得税が課されるため、給与から控除して支払います。 例:20万円の専従者給与から源泉所得税2万円を控除して支払った場合
借方:専従者給与 200,000円
貸方:預り金(源泉所得税) 20,000円
貸方:普通預金 180,000円
- 源泉所得税の納付
控除した源泉所得税を税務署に納付します。 例:源泉所得税2万円を納付した場合
借方:預り金(源泉所得税) 20,000円
貸方:普通預金 20,000円
税務上の注意点
- 適正額の設定
適正額を超える専従者給与は、税務上認められない場合があります。仕事内容や地域の給与水準を考慮して設定しましょう。 - 届出内容の遵守
届出額を超えた給与は必要経費として認められないため、事前に適切な額を届け出ることが重要です。 - 事業専従者の条件確認
専従者が事業に従事していない場合や勤務実態がない場合、給与は経費として認められません。 - 年末調整と源泉徴収票の発行
専従者給与についても、他の従業員と同様に年末調整を行い、源泉徴収票を発行します。
専従者給与のメリット
- 節税効果
青色申告では、専従者給与を必要経費として計上できるため、事業主の所得税が軽減されます。 - 家族への所得分散
家族が所得を得ることで、事業主の所得を分散し、所得税の累進課税負担を軽減できます。 - 事業の経費管理が明確化
家族従業員の給与を明確に記録することで、事業経費の把握が容易になります。
専従者給与の注意点
- 届出の期限を守る
青色事業専従者給与に関する届出書は、税務署に期限内(事業開始後2ヶ月以内)に提出する必要があります。 - 勤務実態の確認
専従者が実際に事業に従事していることを証明できるよう、勤務記録や仕事内容を記録しておきます。 - 過大支給のリスク回避
専従者給与が過大であると判断された場合、経費として認められないだけでなく、税務調査の対象となる可能性があります。
専従者給与の仕訳例
- 専従者に給与を支払った場合
借方:専従者給与 300,000円
貸方:普通預金 300,000円
- 源泉所得税を差し引いて支払う場合
借方:専従者給与 300,000円
貸方:預り金(源泉所得税) 30,000円
貸方:普通預金 270,000円
- 源泉所得税の納付
借方:預り金(源泉所得税) 30,000円
貸方:普通預金 30,000円
まとめ
「専従者給与」は、個人事業主が家族従業員に支払う給与を経費として計上できる重要な制度です。ただし、税務署への事前届出や適正額の設定、勤務実態の確認など、ルールを守ることが求められます。適切に処理することで、節税効果を得られるだけでなく、事業経営の透明性を高めることができます。
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