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簿記の勘定科目:「退職金」の基礎知識

「退職金」とは、従業員が退職する際に支給される金銭であり、これまでの勤務に対する報酬や慰労の意味を持つ重要な支払い項目です。退職金は、従業員の福利厚生の一環として、多くの企業で採用されており、企業にとっても財務的に大きな影響を与える要素の一つです。本記事では、退職金の概要、会計処理、税務上の取り扱い、注意点について詳しく解説します。


退職金とは?

退職金は、従業員や役員が退職時に受け取る金銭であり、以下のような種類に分類されます:

  1. 定年退職金
    従業員が定年退職する際に支払われる金額。
  2. 自己都合退職金
    従業員が自己都合で退職する場合に支給される金額。
  3. 会社都合退職金
    企業の都合(リストラや解雇など)で退職する場合に支払われる金額。
  4. 役員退職慰労金
    役員が退任時に受け取る慰労金。

退職金の会計処理

  1. 退職金の支払い時の仕訳
    退職金を支払った際には、「退職給付費用」または「退職金」勘定に計上します。 例:従業員に退職金300万円を支払い、銀行口座から送金した場合
   借方:退職金 3,000,000円  
   貸方:普通預金 3,000,000円
  1. 退職給付引当金の計上(決算時)
    将来の退職金支払いに備え、当期の負担分を「退職給付引当金」として計上します。 例:当期に退職給付費用100万円を見積もり、引当金を計上する場合
   借方:退職給付費用 1,000,000円  
   貸方:退職給付引当金 1,000,000円

実際に退職金を支払った場合、以下の仕訳を行います:

   借方:退職給付引当金 3,000,000円  
   貸方:普通預金 3,000,000円

税務上の取り扱い

  1. 損金算入
    退職金は、法人税法上、損金(経費)として算入できます。ただし、役員退職慰労金については、過大でない範囲でのみ損金算入が認められます。
  2. 源泉所得税の控除
    退職金には、退職所得控除が適用されますが、支給時に源泉所得税を控除し、税務署に納付する必要があります。 退職所得控除額の計算例
  • 勤続年数が20年以下の場合:40万円 × 勤続年数
  • 勤続年数が20年を超える場合:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 – 20年) 例:勤続25年の場合
   退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 × 5年 = 1,150万円
  1. 役員退職慰労金の特別ルール
    役員退職慰労金については、合理的な基準(勤務年数や貢献度など)で算定されていることが必要です。過大とみなされた場合、損金算入が否認されることがあります。

退職金の仕訳例

  1. 従業員退職金の支払い
   借方:退職金 2,000,000円  
   貸方:普通預金 2,000,000円
  1. 役員退職慰労金の支払い
   借方:役員退職慰労金 10,000,000円  
   貸方:普通預金 10,000,000円
  1. 退職給付引当金の計上
   借方:退職給付費用 1,500,000円  
   貸方:退職給付引当金 1,500,000円
  1. 退職給付引当金を取り崩して支払う場合
   借方:退職給付引当金 1,500,000円  
   貸方:普通預金 1,500,000円

退職金の注意点

  1. 退職給付引当金の妥当性
    退職給付引当金を計上する際は、合理的な見積もりに基づき金額を設定する必要があります。
  2. 役員退職慰労金の適正額
    役員退職慰労金は、過大である場合、税務上問題視されることがあります。市場水準や業績を基準に設定することが重要です。
  3. 源泉徴収漏れの防止
    退職金支払い時には、退職所得控除を適用し、源泉所得税を適切に控除して納付する必要があります。
  4. 社内規程の整備
    退職金の支給基準や計算方法を就業規則や退職金規程に明記し、従業員に周知しておくことが重要です。

退職金の管理方法

  1. 退職給付制度の活用
    企業年金や確定拠出年金制度を導入し、従業員の将来の退職金支給に備える方法があります。
  2. 退職給付引当金の計上
    毎期の退職給付費用を合理的に見積もり、引当金として計上することで、将来の財務負担を軽減します。
  3. 税務リスクの管理
    税務署への適切な申告を行い、税務リスクを回避します。
  4. 退職金規程の見直し
    社内の退職金規程を定期的に見直し、法改正や経営環境に応じて柔軟に対応します。

まとめ

「退職金」は、従業員や役員に対する重要な報酬項目であり、企業にとっても財務的・税務的に大きな影響を与える要素です。適切な会計処理と税務対応を行い、社内規程を整備することで、従業員満足度の向上と企業の信頼性を高めることができます。

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