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7. 資金の確保と運用 ― 事業の生命線
事業経営において「資金」は企業の生命線であり、その調達と運用は経営者にとって最も重要な課題です。適切な資金計画を立て、経営戦略と調和させることが、企業の成長と安定経営を支えます。
1. 資金目標設定のポイント
資金の確保と運用において、以下の要素が重要です。
- 調達方法の選択
自己資本、長期借入、外部投資家など、多角的な調達手段を検討する。 - コスト意識
金利や条件などのコストを最小化し、無駄な負担を減らす。 - キャッシュフロー管理
資金の流入と流出を計画的に管理し、事業成長と安定を両立させる。 - 長期的視点
短期的な資金繰りだけでなく、将来の投資や成長を見据えた資金計画を策定する。
2. 外部資金の導入方法
内部留保や減価償却費だけでは増加する資金需要を賄えない場合、外部からの資金調達が必要です。主な方法は以下のとおりです。
1. 増資
増資は最も望ましい方法ですが、株主に信頼される企業であることが前提です。
- 株主配当の重要性:二割配当が理想で、最低でも一割三分の配当が必要。
- 基準の目安:
- メーカー:月商と同額以上の払込資本金
- 流通業者:月商の3分の1以上
増資の課題:
中小企業の場合、オーナー社長が資金を個人で捻出しなければならず、負担が大きいのが現実です。そのため、以下の方法も検討すべきです。
- 金融機関や取引先への持株要請
- 社員持株制度の導入
- 株式公開(上場)
2. 長期借入金
金融機関からの長期借入は、経営権を維持しながら資金を調達する手段です。
- 基本原則:
- 運転資金 → 短期借入
- 設備資金 → 長期借入
注意点:
設備投資時には、供給能力増加に伴う運転資金の需要も考慮し、資金繰りが悪化しないよう慎重に計画する必要があります。
- 自己資金を温存する:
設備投資は長期借入金で賄い、自己資金は運転資金や緊急時の対応に備えるべきです。
3. 過少資本のリスク
自己資本が不足していると、以下の深刻な問題が生じます。
- 他人資本への依存度増加
借入金に頼らざるを得なくなり、金利負担が経営を圧迫する。 - 資金繰りのリスク
不況時に返済が困難となり、経営危機に陥る可能性が高まる。 - 配当額の限界
資本が少ないため、配当額が小さくなり、株主の不満や信用低下を招く。 - 相続税の負担増
過少資本の場合、1株当たりの評価額が高くなり、株主に多大な相続税負担が発生する。
4. 自己資本と借入のバランス
「借入金の利子は経費になるため、増資より有利」との考え方もありますが、これは一面的な見方です。
- 借入金依存のリスク:金利負担と返済リスクが経営の安定性を脅かす。
- 自己資本の重要性:信用力向上や長期的な経営基盤の安定に寄与する。
経営判断では、自己資本と借入のバランスを考慮し、最適な資本政策を策定することが不可欠です。
まとめ:資金計画は企業の未来を支える基盤
資金調達と運用は、企業経営の根幹です。
- 増資と長期借入金を適切に活用し、事業の成長を支える。
- 過少資本のリスクを理解し、自己資本の充実を図る。
- 短期と長期の視点を持ち、キャッシュフローを計画的に管理する。
社長は、資金計画を長期的な視野で位置づけ、企業の成長と安定のために、資金の確保と運用に真剣に取り組む必要があります。
「資金は経営の血液である」――この認識を持ち、健全な資本構造を築くことが、持続的な経営を支える礎となるのです。
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