企業経営において、社員の処遇と福利厚生は重要な要素です。しかし、これらを適切に設計しなければ、かえって問題を引き起こすこともあります。社長が正しい方針を示し、バランスの取れた制度を築くことが、社員の幸福と企業の成長につながります。
1. 賃金水準 ― 適正な基準を設定する
社員の処遇で最初に考えるべきは「賃金水準」です。その基準として適しているのは、「同地区のモデル賃金の10%高」を目指すことです。
賃金が低すぎる弊害
賃金が世間相場を下回るのは論外です。優秀な人材の流出や、社員の士気低下を招くことになります。
賃金が高すぎるリスク
一方で、賃金が高すぎることも問題です。企業は玉石混交の人材を抱えており、優れた社員だけでなく、いわゆる「石や瓦」のように見える存在も大切に育てる必要があります。しかし、賃金が高すぎると、社員の勤労意欲が低下し、欠勤の増加や生活の乱れ(例:酒やギャンブル)を引き起こすこともあります。
このような事態を避けるために、適正な賃金水準を「モデル賃金の10%高」とすることで、社員の生活を支えながらも健全な働き方を促進できるのです。
2. 労働時間 ― 段階的な改善で不満解消
賃金と並んで重要な要素は「労働時間」です。たとえば、週休二日制の導入を目標に設定し、段階的に実現する計画を立てることが効果的です。
- 第一年度:月に1回の週休二日
- 第二年度:月に2回の週休二日
- 第三年度以降:完全週休二日制
このように段階的な目標を掲げることで、社員の理解を得やすくなります。あるC社長は、「週休二日制のスケジュールを発表したことで、同地区の大企業より休日が少ないことへの不満が解消された」と語っています。将来の楽しみが明確に示されることで、社員は現状の不満を受け入れることができるのです。
3. 福利厚生 ― 本質的な幸福への配慮
福利厚生は社員の幸福を増進するために存在しますが、「やりすぎ」には注意が必要です。小手先のテクニックや過剰な施策は、時間と資金の無駄に終わるだけでなく、社員の甘えや我儘を助長するリスクがあります。
本質的な福利厚生とは
福利厚生は、社員の生活を支え、企業への信頼を高める施策でなければなりません。たとえば、S精密の「持家制度」のように、次元の高い施策が求められます。
4. 第二の人生への配慮
私の考えでは、在職中の福利厚生を必要最低限に抑え、その分、事業経営に注力することが望ましいです。そして何より重要なのは、定年退職後の「第二の人生」への配慮です。
退職後の生活設計や再雇用制度、老後の経済的サポートといった施策は、社員にとって大きな安心感と希望を与えます。こうした取り組みこそが、社員にとって本当の幸福をもたらし、企業への忠誠心と信頼を高めるのです。
まとめ
社員の処遇や福利厚生は、バランスが大切です。賃金は「同地区モデル賃金の10%高」、労働時間は段階的な改善、福利厚生は本質的な幸福を支える施策を中心に設計する。そして、退職後の人生への配慮を忘れず、企業としての責任を全うすることが、真に社員に愛される会社づくりのカギとなります。
「社員の幸福を追求し、企業の成長を支える」――そのための処遇と福利厚生を、経営者自らが本気で考え、取り組む姿勢こそが重要です。
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