業績が低迷している企業の社長の中で典型的なのが、「陣後督戦型」の社長である。彼らは自ら先頭に立つことを避け、部下の努力や成果に依存して業績の改善を目指す。だが、この姿勢は経営者としての責任を放棄したも同然であり、結果的に組織の停滞を招く。
陣後督戦型の社長は、業績が向上しないと、部下にその責任を押し付ける。部下の「自覚が足りない」「熱意が不足している」「責任感が薄い」といった非難を繰り返し、最終的には「こんな状態では楽になる日が来ない」と愚痴をこぼす。こうした姿勢が組織全体に悪影響を及ぼしていることに気付かない。
組織改編という「責任転嫁」の象徴
陣後督戦型の社長が成果を出せないとき、次に手をつけるのが組織改編だ。「現状の組織に問題があるから業績が振るわない」と考え、頻繁に組織の再編を行う。しかし、組織を変えることで経営の根本的な課題が解決することは稀だ。業績不振の原因は、ほとんどの場合、社長自身が経営という本来の役割を果たしていないことにある。
経営者の役割は、内部の組織管理に埋没することではない。むしろ、その本質は外部との関係性の中でこそ発揮されるべきものだ。顧客や市場の変化に目を向け、競合他社に対する戦略を練ることが最優先事項である。しかし、多くの陣後督戦型社長は、外部の課題を見落とし、内部問題にばかり注力する。これでは経営の軸が定まらず、組織全体が迷走するのも無理はない。
経営の本質と内部管理の誤解
本来の経営とは、顧客や市場、そして競争環境を的確に捉え、それを基に会社の方向性を決定し、実行を主導することである。しかし、多くの経営者が内部管理を経営の本質と勘違いしている。組織管理や部下の自主性尊重といった管理論に偏りすぎると、経営者の目線は外部から逸れてしまう。
「部下の活躍を支援する」「働きやすい環境を整える」といった姿勢自体は否定すべきではないが、それが経営者の中心的な役割ではない。経営者は、内部の調整に終始するのではなく、市場の動向を見極め、会社全体を動かす戦略を実行することに時間とエネルギーを割くべきだ。
誤った経営観に囚われた社長たち
陣後督戦型社長のもう一つの問題は、自分の姿勢が間違っていると気づかない点だ。むしろ、「自分こそが理想の経営者だ」と信じて疑わない。この自己満足が改善への最大の障壁となっている。部下の立場を「理解している」と思い込む一方で、実際には経営の本質である外部対応を軽視し、会社の未来を曇らせているのだ。
こうした社長たちは、自社の業績不振を部下や組織構造の問題として片付けることで、自らの責任を回避している。しかし、その結果、会社は市場や顧客に対する競争力を失い、さらに業績が悪化する悪循環に陥る。
陣後督戦型からの脱却――経営の再定義
陣後督戦型の社長が業績を改善するためには、以下のような変化が求められる。
- 外部対応を最優先にする: 市場の変化を読み解き、顧客ニーズに即した戦略を策定することが最優先事項である。
- 責任を部下に押し付けない: 部下の成果を期待するのではなく、社長自らが経営の舵を取り、明確な方向性を示す。
- 内部管理への過度な執着を捨てる: 組織構造や人材管理に執心するのではなく、経営資源を外部との競争力向上に集中させる。
- 自己満足を排除する: 自分のやり方が「理想的」と思い込まず、経営の根本を見直す謙虚さを持つ。
経営者が果たすべき本当の役割
真の経営者は、自分の役割を「部下を管理すること」や「組織を最適化すること」と限定しない。企業が存続し、成長するためには、顧客に価値を提供し続けることが不可欠であり、そのための戦略と意思決定を行うのが経営者の本分である。
陣後督戦型社長は、その役割を外部ではなく内部に限定することで、自らの責務を果たせていない。この現実に目を向け、外部に目を向けた経営へとシフトすることこそが、業績を向上させる唯一の道である。
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