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値上げ分をすべて品質に還元する信念

山梨県甲府市に本社を構える「きねや」は、地域に根ざした菓子製造・販売を行う企業だ。山梨から長野にかけて店舗展開を進め、地域住民から愛される存在となっている。この企業を率いる輿石社長は、顧客第一主義を徹底しており、その理念が会社の基盤となっている。

看板商品である「くるみパイ」は、きねやの誇りとも言える一品だ。ほどよい甘さのくるみ入りあんを、サクサクのパイ生地で包んだこの商品は、幅広い年齢層から支持を集めている。その人気ぶりは驚くべきもので、生産が追いつかないほどの売れ行きを見せ、購入した顧客から感謝の手紙が届くことも珍しくない。


手作業にこだわる品質への情熱

「くるみパイ」の製造工程で特筆すべきは、その徹底した手作業だ。多くの製菓メーカーが機械化を進める中、きねやではあえて人の手で一つ一つ丁寧に作られている。機械化を試みたこともあったが、パイ生地の柔らかさや風合いが損なわれることが判明し、導入を断念した。

効率化を目指すのが普通の選択肢だが、輿石社長は品質の追求を優先した。人手による生産体制を選ぶことで、独特の繊細な仕上がりと美味しさを維持している。その結果、能率は犠牲になるが、顧客の満足度が高い状態を保ち続けている。


値上げ分をすべて原料費に充てる覚悟

さらに味を磨き上げるため、輿石社長は大胆な決断を下した。パイに使用するくるみの量を増やし、より豊かな味わいを実現することにしたのだ。この改良にはコストが伴うため、価格を10円引き上げることとなった。しかし、その値上げ分はすべて増量分のくるみに充てられた。

一般的な企業であれば、値上げによる利益増を狙うことも考えられる。しかし、きねやでは一切そうした発想を持たず、顧客に最高の品質を届けるためだけにその収益を使うという信念を貫いたのだ。

輿石社長は、「顧客が喜んでくれれば、売上は自然と伸びる」と語る。その結果、チェーン店全体の繁栄にもつながると確信している。この姿勢は、短期的な利益よりも長期的な信頼構築を優先する経営方針を象徴している。


信頼で結ばれるチェーン全体の絆

この品質重視の方針は、フランチャイズの店舗にも共有されている。輿石社長はチェーン店の経営者たちに丁寧に説明を行い、その意図をしっかりと伝えた。経営者たちはその考えに納得し、方針を全面的に受け入れた。きねやの品質を守り続けるという共通の目的が、チェーン全体を強く結びつけている。

チェーン店の経営者たちがこの方針に共感した背景には、輿石社長自身の誠実な人柄と確かな経営手腕への信頼がある。輿石社長もまた、その信頼に応えるべく、一貫した姿勢を崩さない。この相互の信頼が、きねやというブランドを支える原動力となっている。


顧客の支持が未来を切り拓く

「値上げ分をすべて原料費に使う」という決断は、きねやの経営理念を象徴するものだ。目先の利益を追求するのではなく、顧客の満足度を優先し、その信頼を土台に事業を展開する。この方針がきねやの強みであり、チェーン全体の安定成長を支えている。

輿石社長の言葉を借りるなら、「顧客第一主義は、必ず報われる」。その言葉通り、きねやは今後も地域に愛される企業として、着実な発展を遂げていくだろう。

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